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  • 2018年6月26日

    腸のはたらきと排便のしくみ

    胃や小腸で消化された食物は、水分の多いどろどろの液状となって大腸に入り、ゆっくりと水分が吸収されて固形化(便塊化)し肛門へと送られます。もし便塊が何日も大腸内にあると、水分吸収はさらに進み便塊は硬く小さくなります。腸の動きは自律神経に支配されています。胃に食物が入ると自律神経の指令により、便を体外に送り出すための蠕動(ぜんどう)運動が始まります。そして便が直腸に達すると、そこから大脳に指令が送られ便意をもよおします。

    便通は基本的に毎日あるのが健康な状態です。3日以上なかったり便が硬くて量が少なく残便感があったりする状態を便秘と呼びます。女性や高齢者に多く、腹痛、腹部膨満感、食欲不振などの症状もあらわれます。肌荒れや肩こりなど、全身に影響が出ることもあります。

     

    便秘の原因

    便秘の原因には、毎日の生活習慣,腸や骨盤底の働きの異常,全身の病気,薬など様々なものが考えられます。偏食やダイエットにより食物繊維の摂取量が不足すると、便が少なくなり便秘になりやすくなります。また、体を動かすことが少ないと腸の蠕動運動が不活発になり便秘になります。さらに、強いストレスがかかると自律神経のバランスが崩れ、正常な腸の蠕動運動が起こらず便が滞って便秘につながることもあります。

     

    便秘の種類

    便秘には機能性便秘3種類と器質性便秘の計4種類に分けられます。鍼灸は機能性便秘には有効ですが、器質性便秘の鍼灸は内容により有効なものと無効なものがあります。

    機能性便秘

    [弛緩性便秘]=大腸の運動が低下

    女性や高齢者に多く、常習便秘の大部分がこのタイプです。腸管の緊張が弛んでしまい蠕動運動が十分行われないため、大腸内に便が長くとどまり、水分が過剰に吸収されて硬くなり、大槐または太くなります。

    おなかが張る、残便感、食欲不振、倦怠感、頭痛、肩こり、肌荒れ、イライラなどの症状が起きます。

    運動不足、水分不足、食物繊維不足、腹筋力の低下、極端なダイエットなどが誘因となります。

    [痙攣性便秘]=大腸の過緊張

    副交感神経の過度の興奮によって腸管が過緊張で便がうまく運ばれず、ウサギのフンのようなコロコロとした便になるタイプです。食後に結腸運動の亢進によって左下腹部痛、残便感などの症状が起きることもあります。また便秘と下痢を交互にくり返すこともあります。

    精神的ストレス、環境の変化、過敏性腸症候群などが誘因に

    [直腸性便秘]=直腸に便が停滞

    便が直腸に達しても排便反射が起きづらく、直腸に便が停滞してうまく排便できなくなるタイプで、弛緩性便秘に合併することが多いです。

    高齢者や寝たきりの人のほか、痔や恥ずかしさなどにより排便を我慢する習慣がある人に多い。

    器質性便秘

    イレウス(腸閉塞)、大腸がん、腸管癒着などの器質的な原因があって、消化管(小腸・大腸)に通過障害が起こるタイプのものだと鍼灸は不適となります。ただし、脱肛、痔核などの痛みで排便障害となったものや、排便反射の改善には鍼灸が有効となる場合があります。

     

    便秘の鍼灸治療

    鍼灸: 大腸兪、便通(大腸兪外方3寸)、左腹結(上前腸骨棘前内縁中央から内方1寸)、天枢、小腸兪

    灸よりも鍼の方が奏功することが多い

     

    療養指示

    排便を毎日つける習慣にすることが重要です。歩行または適当な運動によって腹筋の力を増す方法を考え実行します。食物は線維に富む植物性食品を多くし、コンニャク、イモ類を増やし、食事の量も増加しなければなりません。生野菜、果実は便通を促します。飲み物などの水分摂取を心がけます。酢を含んだ調理も腸の蠕動を亢進します。ただし、肉類は適さず、果実でもリンゴは便秘に傾くので注意してください。

     

     

     

     

     

     

     

  • 2018年6月22日

    不眠とは、睡眠と覚醒のリズムが破れ主観的な睡眠感を得られないことを言い、以下のような形態に分類できます。

    ①    就眠障害(入眠障害):床に入ってもなかなか眠ることができず、甚だしいときは一睡もできないことがある。神経質者、神経症者の不眠に代表される

    ②    熟睡障害(中間覚醒):眠りが浅く、夜中に何度も目が覚めるもの。脳器質障害、うつ病、統合失調症、また中間覚醒は老年性不眠症にも見られる

    ③    早期覚醒:早朝に目覚めてしまい、その後眠れないもの。躁鬱病に多く見られるが、老年性不眠にもある

     

    不眠症はその発生機序により以下の種類に分類されます。

    ①    一過性不眠症は、急性のストレス、ショックなどにより誘発されるもので、鍼灸治療に適する

    ②    持続性不眠症は慢性的な緊張、不安などによるもの。鍼灸治療により自律神経系を刺激することで改善する

    ③    症候性不眠は各種の疾患に伴う睡眠障害で、特にうつ病などの精神疾患によるもの、内科的、あるいは外科的な痛みによるものが挙げられる。あるいは、発熱、掻痒感、咳、痰、呼吸困難、下痢、嘔吐なども不眠の原因になる。これらは原因疾患の治療が優先されないと治癒には至らない

     

    不眠症(睡眠障害)の鍼灸治療

    鍼灸治療は精神的な興奮や自律神経の乱れを鎮め、全身調節をおこない正常な身体のリズムを取り戻すようにします。不眠障害の初期の方や軽い症状の方は、鍼灸治療が極めて効果的です。

    鍼は太陽、完骨に一定時間の置鍼、灸は完骨のツボを使います。また、補助的に背後兪穴で肺兪、心兪、腹部の中脘、前腕内側の内関を使います。灸は眠った気がしないという人に厥陰兪が有効です。

    東洋医学では、不眠症(睡眠障害)は「失眠」または「不寝」といい、心・肝の機能の変調によって起きると考えています。心による不眠は寝つきが悪く、寝ても夢見が多く、肝による不眠は眠りが浅く、よく目を覚まします。原因としては,生まれたときからの体質が弱い、食事の不摂生や感情の乱れ、ストレス、慢性病による体力の低下などが考えられます。

     

    イライラによる不眠症(肝)

    このタイプは神経質で怒りっぽい。口が渇く、目が赤くなり、口が苦い、便秘などの特徴があります。

    鍼灸治療のポイント:肝経のツボとして肝兪、期門、蠡溝、胆経の陽陵泉を使って治療を行います。

     

    身体の抵抗力が低下した不眠症(肺)

    上気道が弱く感冒に冒されやすく気管支が弱くて咳・痰が出やすい、皮膚の抵抗が弱く虫刺されやかぶれが起きやすい、下痢と便秘を反復するなどの傾向があります。

    鍼灸治療のポイント:肺経の中府、太淵、脾経の三陰交に鍼とお灸の治療を行います。

     

    体力低下による不眠症(腎)

    病気の後や加齢によるものが多く、眠りが浅くなる、寝つきが悪くなるタイプです。

    鍼灸治療のポイント:腎兪、関元、復溜など腎経に軽く刺激でお灸と鍼を行います。

     

    生活習慣の改善

    精神疾患など症候性の不眠症は別として、精神生理学的な要因による不眠症は生活習慣を改めることで改善します。以下にその要点を掲げておきます。

    ①    寝る前には、興奮する会話やTVでのスポーツ観戦などを避ける

    ②    夜は刺激物であるカフェイン(お茶やコーヒーなど)やニコチン(煙草)の摂取を止める

    ③    寝る前は軽い音楽を聞いたり、精神が休まるような内容の書を読んでリラックスする

    ④    規則正しい食事(寝る前の飲食をしない)と規則的な運動習慣

    ⑤    眠くなってから床に就くこと。就寝時刻にこだわり過ぎない

    ⑥    毎日同じ時刻に起床する(早寝早起きの生活習慣)、さらに朝に太陽の光をしっかりと浴びて体内時計のリズムを正しく動かす

    ⑦    眠ろうとして過度の努力をせず目を閉じて静かに身を横たえておく