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頭・顔・神経痛

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    三叉神経痛とは

    顔面の表在感覚は、第5脳神経の三叉神経が支配しています。そのため、多くの顔面痛は三叉神経痛が主体となって起きます。三叉神経は、脳神経中で最大の知覚と運動が混合した神経で、側頭骨の錐体先端で三叉神経節を作って膨大し、3本の三叉神経枝を出します。

    第1枝は眼神経で、前頭と頭頂の皮膚感覚をつかさどります。その他眼瞼、眼球、鼻粘膜の感覚もつかさどっています。第2枝は上顎神経で、頬部、上唇、側頭部の皮膚感覚をつかさどります。

    第3枝は、下顎神経で下顎、下唇、側頭部、耳介の皮膚に分布し、下歯、歯肉、鼓膜、舌の感覚をつかさどり、顎下腺、舌下腺にまで至って分泌作用を支配します。さらに舌下神経、顔面神経と交通して、交感性、副交感性の結合も行います。

    三叉神経痛では、原因が不明である特発性(本態性)がほとんどを占めており、中年以降の女性に多く見られます。特発性三叉神経痛の特徴は、疼痛域が局在していること、発作時間が短いこと、誘発帯を持つこと、感覚障害を持たないこと等があげられます。誘発帯と言うのは、接触刺激や温冷刺激で疼痛発作が誘発される部位があるということで、接触刺激は軽い時に触発され、強い圧迫などでは生じません。例えば、日常動作として顔に触れる、ひげそり、口紅ぬり、歯磨き、咀嚼、嚥下、洗面、冷たい食物の摂取等で生じ、食事や会話などが阻害されてしまいます。

     

     

    三叉神経痛の鍼灸治療と療養

    三叉神経痛で激痛を生じるのは、第2枝の上顎神経と第3枝の下顎神経の領域であり、大の大人が号泣するほどの症状は上顎神経の痛みが多いようです。

    : 風池、肩井、膏肓

    : 風池、肩井または膏肓

     

    療養
    カイロなどによる保温は局所の血液循環を改善するので勧められますが、高温の入浴は一時的に血管拡張で痛みの改善が得られるものの、後に血管収縮でかえって痛みが増すことになりますので注意が必要です。低温で長時間の入浴かシャワーが良いでしょう。飲酒も入浴と同様なことが起きますので、節酒が肝要です。

  • 坐骨神経痛とは

    坐骨神経痛は、名前が示すとおり「坐骨神経」が圧迫などによって生じる「神経痛」を総称したものですが、これは症状(症候名)を示すだけのものであり、病名(原疾患)そのものを表しているものではありません。坐骨神経とは腰椎4番目・5番目の神経と仙骨の前面から出て、梨状筋の下を通り、大腿後面中央を下行、膝の裏で総腓骨神経と脛骨神経に分かれ、下肢~足裏に走行する、人体の中で最も太くて長い神経です。坐骨神経痛は、坐骨神経が圧迫などの障害を受けたため、腰・臀部~下肢にしびれや痛みを発症するものです。原疾患は以下のように腰椎・仙椎に関連するもの、脊髄に関連するもの、その他の3つに分類されます。◯で示したものが鍼灸治療に対応する主疾患、△は鍼灸治療対応の准疾患を表します。

    1.腰椎・仙椎に関連する坐骨神経痛(◯:主疾患、△:准疾患)

    ◯ 変形性脊椎症
    ◯ 腰部椎間関節(主として仙腸関節)
    △ 椎間板ヘルニア
    △ 脊椎すべり症
    △ 腰部脊椎管狭窄症
    腰部圧迫骨折
    黄色靱帯骨化

     

    2.脊髄に関連する坐骨神経痛

    脊髄腫瘍
    限局性髄膜炎
    脊柱管内血管異常

     

    3.その他の疾患に伴う坐骨神経痛

    ◯ 梨状筋症候群
    ◯ 関節リウマチ
    ◯ 糖尿病
    △ 子宮筋腫
    ◯ 妊娠

     

    まず、直立状態から前屈に入った時の坐骨神経の放散痛がある(ゴールドフラム徴候)かどうかを確認します。痛みがあれば陽性となります。経過観察のために前屈して症状が出た時の指先と床との距離を測定・記録しておきます。腰椎棘突起の叩打痛、あるいは棘突起・棘突起間の圧痛を検査します。そのことにより罹患椎を特定できることがあり、鍼灸治療点のヒントを得ることができます。次に坐骨神経を伸展させたときの症状を調べるために、膝関節と股関節を屈曲させて下肢を挙上し、そこから膝関節を伸展していきます。この時に症状が出るもの(ラセーグ徴候)を陽性とします。同様に膝関節を伸展させたまま下肢を挙上し、症状の出現状態を診るのをSLR(下肢伸展挙上テスト)と呼んでいます。椎間板ヘルニアの同定に重要な検査でもあります。神経痛の部位の確認としては、太い神経が体表に現れる部位での圧痛を調べます。場所としては臀部の梨状筋や大腿後面中央、ふくらはぎの外側部です。また、障害を受けている神経根の部位により対応する足の指に感覚障害が生じます。検査は筆により感覚異常の場所を確認し、障害部位を推定します。梨状筋の過緊張を検出するために、SLRで陰性の時に下肢を挙上して大腿を内旋させたとき疼痛の有無を調べるボンネット・テストや、下肢を交叉させて患側の大腿の内転と内旋により疼痛を起こさせる梨状筋緊張試験を行います。

    坐骨神経痛の鍼灸治療と療養

    傍神経刺とその他の鍼

    傍神経刺として、患側の上大腸兪(L4棘突起下縁の外方3cm)・殿部圧点(上後腸骨棘の外下縁と大腿骨大転子の内上縁を結んだ中点)に2.5寸の鍼を約6cm刺入し15分間置鍼します。その他に両側腎兪・健側大腸兪・上胞肓・外胞肓・外殷門・外承筋・足三里の8穴に腰殿部は1.5~2cm、下肢部は1~1.5cm刺入し15分間置鍼します。

     

    療養

    坐骨神経痛は多くが慢性的疼痛であり、場合によっては安静時でも激しい痛みに苦しめられることもあります。この様な場合は絶対安静が必要ですが、患側を上にして側臥位をとり股関節・膝関節は共に少し屈曲して、できるだけ坐骨神経を伸展させないようにします。それでも痛む時は腹部に枕を入れて腹臥位になるとよいでしょう。低温のカイロなどによる長時間保温は局所の血液循環を改善し、筋肉の緊張を和らげるので勧められますが、高温の入浴は一時的に血管拡張で痛みの改善が得られるものの、後に血管収縮でかえって痛みが増すことになりますので注意が必要です。低温で長時間の入浴かシャワーが良いでしょう。飲酒も入浴と同様なことが起きますので、禁酒または節酒が肝要です。

     

  • 頭痛は、疾患などの原因がないのに頭痛が繰り返して起こる「機能性頭痛」と、原因がはっきりしている「症候性頭痛」の2つに大きく分けられます。

    「機能性頭痛」は、慢性頭痛、頭痛持ちの頭痛とも言われ、片頭痛、緊張型頭痛(筋収縮性頭痛)、群発頭痛がこれに該当し鍼灸の良い適応となります。

    一方、「症候性頭痛」は脳などの疾患が原因で起こる頭痛であり、脳卒中や外傷による硬膜下血腫、脳腫瘍など、生命の危険を伴うこともあるので要注意です。以下のような症状の場合は、一刻も早く病院で精密検査を受けてください。

    ・ハンマーで殴られたような激痛、今まで経験したことのない痛み
    ・片側の手足、顔半分の痺れ、麻痺が起こる
    ・呂律が回らない、言葉がうまく出ない
    ・他人の言うことが理解できない
    ・力があるのに立てない、歩けない、ふらつく
    ・片方の目が見えない、物が二重に見える、視野の半分が欠ける

    現在、日本人の3~4人に1人(約3000万人)が「頭痛持ち」と言われています。そのうち70%以上が緊張性頭痛、25%が片頭痛、0.03%が群発頭痛で、クモ膜下出血・脳腫瘍による頭痛は、毎年約1~3万人に発生すると言われています。男性よりも女性のほうが頭痛の症状を訴えることが多く、筋緊張性頭痛の6割、片頭痛の8割が女性です。これはホルモンの関係と考えられています。

    鍼灸治療の対象になるのは、「機能性頭痛(緊張型頭痛・筋収縮性頭痛・片/偏頭痛・群発頭痛)」ですが、これらの特徴と治療方法について見ていきます。

     

    緊張型頭痛・筋収縮性頭痛の鍼灸治療

    原因は、首の筋肉の緊張とそれに伴う血管や神経への圧迫で起こります。緊張性頭痛の症状としては、後頚部から後頭部にかけて鈍痛や帽子をかぶったような感じ、圧迫感、頭重感、締め付けられた感じがあります。時には側頭部や前頭部の方にも症状が現れ、ほとんどの場合が首や肩のコリや痛みを併発しています。

    このタイプの頭痛の発症はゆるやかで症状が比較的長く続き、お風呂に入ったりして温めたりすると楽になります。
    頚椎の上部からは頭へ、中央部や下部からは頚、肩、手に神経が走っているので、前傾時に頸椎が頭を支えるという負担が大きくなれば、頭痛だけでなく頚コリ、肩コリも併発しやすいのです。

    鍼灸による治療では、頸椎上部のコリのある筋肉が神経を締め付けやすいので、ここを緩めてあげれば症状をとることができます。ツボでいうと天柱、風池、完骨に相当します。鍼は、筋肉がコリ固まって緊張性頭痛の原因となっている所に直接アプローチするので断然効果的です。

     

    片頭痛の鍼灸治療

    片頭痛の症状は、頭の片側がズキンズキンと脈打つような拍動性の強い痛みに襲われます。このような痛みが月に1~2回、多い人では週に1~2回発作的に起こり、数時間から3日間ほど続きます。頭痛に伴って吐き気がしたり、また、光や音に過敏になったり、体を動かすと痛みがひどくなるため、片頭痛発作が始まると、部屋を暗くして洗面器をかかえて寝込んでしまうこともあります。

    片頭痛の痛み自体は、休息や睡眠により和らぎます。発作が治まると次の発作が起こるまで全く症状がみられなくなります。

    頭痛が起こる「前兆」として、約10~20分間、視界がチカチカしたりギザギザした模様が広がって、ものが見えにくいといった症状が出る場合もあります。これを「閃輝暗点」と呼んでいます。

    東洋医学では全身の血液の流れのバランスを重視します。頭痛の多くは頭部の方へ血液が過度に供給され、手足など末梢の循環が悪い状態です。手足に行くはずの血液が頭部にそのまま留まるので、頭部が充血してパンパンに張りつめた状態になり頭痛を起こすわけです。これを治すには頭や頚への治療だけでなく、手や足といった末梢のツボを刺激し、頭に上った血を手足の方へ誘導していかなくてはなりません。

    また、鍼灸には拘縮した血管を拡張するだけでなく、拡張しすぎた血管を収縮させる機能も持っていますので、それを用いて頭頸部において血液の流れを正常に戻します。このように局所治療と全体治療を併用していかなければなりません。
    局所治療である頭部のツボは、緊張型頭痛と同じ天柱、風池、完骨の他に百会、正営、承霊などが用いられます。

     

    群発頭痛・群発性頭痛の鍼灸治療

    群発頭痛の症状は片側の眼の奥が激しく痛みます。「キリで眼の奥を突かれる」様な痛みと表現されることもあります。発症する時間帯は夜間に多く、一旦発作が始まるとおよそ30分から2時間程続きます。群発頭痛は発症期間に特徴があり1~3ヵ月にわたって続き、特に春から梅雨の時期にかけて多発します。

    原因はよくわかっていませんが、片頭痛のように頭蓋外血管の異常拡張が関係していると考えられています。また症状の範囲からみて三叉神経の関与も疑われます。

    群発頭痛に対する鍼灸治療の方法は、緊張性頭痛や片頭痛とあまり変わりありません。どの頭痛も首や筋肉のコリ感や痛みを訴えている場合がほとんどです。群発頭痛も同じように首の筋肉、特に頭に近い上部の筋の緊張をとります。