最新情報&ブログ

Latest information & blog

首回り・肩

  • 肘トンネル(肘部管)症候群

    尺骨神経が肘の内側の神経溝内にある部を肘トンネルと言いますが、この尺骨神経が圧迫されたり、牽引されることで神経の知覚、運動障害を起こします。以下のような原因があります。

    •  ・ 神経を固定している靱帯やガングリオンなどの腫瘤による圧迫
    •  ・ 加齢に伴う肘の変形
    •  ・ 子供のときの骨折による肘の変形
    •  ・ 野球や柔道などのスポーツ

     

    麻痺の進行により症状が異なります。初期は小指と環指の一部にしびれた感じがでます。麻痺が進行すると手の筋肉がやせてきたり、小指と環指の変形が起きてきます。

    診断は、肘の内側を軽くたたくと小指と環指の一部にしびれ感がはしります。肘の変形がある場合には、X線(レントゲン)検査で肘の外反変形や関節の隙間の狭いことがわかります。

        

     

    テニス肘(上腕骨外側上顆炎)

    前腕の回内、回外運動、または手指運動を繰り返す頻度の激しいとき、上腕骨外側上顆部に疼痛が生じます。主に短橈側手根伸筋の起始部が肘外側で障害されて生じると考えられています。 この短橈側手根伸筋は手首(手関節)を伸ばす働きをしています。

    ものをつかんで持ち上げる動作やタオルをしぼる動作(前腕の回内、回外運動)をすると、肘の外側から前腕にかけて痛みが出現し、握力が低下します。多くの場合、安静時の痛みはありません。

    肘を伸ばしたまま検者の力に抵抗して手首を伸ばしてもらうトムゼンテストや、肘を伸ばしたまま手で椅子を持ち上げてもらうチェアテストのような試験で診断します。いずれの検査でも肘外側から前腕にかけての痛みが誘発されたら、テニス肘と診断します。

     

    野球肘、ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)

    肘の内側上顆という部分の障害で、使いすぎ症候群の代表的な病態です。円回内筋腱の付着部あるいは筋頭部に疼痛がある場合は内側の障害であり、肘の内側に過剰な負荷がかかることで靭帯が引っ張られ、腱や軟骨が損傷・断裂することで起こります。肘を伸展し手指を背屈した状態で固定し、これに抵抗して屈しようとするとき内側上顎部に痛みを引き起こします。

    また、外側の障害として、骨と骨が衝突することで、骨や軟骨が剥がれたり痛んだりすることで発症する離断性骨軟骨炎があり、母、示指等の腱鞘炎や屈筋の抵抗運動で痛みが出ます。

    投球時のフォロースルーの際に、肘の後方で骨同士が衝突することで、発症する肘頭疲労骨折や、柔道家、槍投げ選手には尺骨鈎状突起内側の上腕筋付着部に、剣道選手や家庭内で作業をする婦人、介護に携わる人などには上腕三頭筋の付着部に、それぞれ疼痛を起こすことがあります。

     

    肘関節痛の共通鍼灸治療

    鍼灸: 曲池、少海

     

    補助治療

     外側上顆部痛  

    鍼: 外側上顆部から下方に数鍼

      灸: 圧痛点

     内側上顆部痛                  

    鍼: 内側上顆部から下方に数鍼

     肘窩部痛             

    鍼: 肘窩部から上方に数鍼

     肘頭部痛             

    鍼: 肘頭部から上方に数鍼

     

    療養指示

    急性の肘関節の疼痛の場合は運動を休止することが重要です。慢性的なものでも運動量を減らすか休まないと快方に向かいません。リウマチの場合は治療期間を年単位で予定しなければなりません。関節部に炎症がなければ保温するのが望ましいです。

     

     

  • 頚椎症は、頸椎(首の骨)の変形や椎間板の変性によって引き起こされる病気で、主に加齢によって起こるとされています。頚椎症は変形性脊椎症や頸椎椎間板ヘルニアなどのような神経根症が主ですが、脊柱管内の圧迫により症状が出る脊髄症も含まれます。いわゆる頸肩腕症候群全体の約50%を椎間板ヘルニアなどの頚椎椎間板症が占めると言われています。頚椎椎間板症の中で最も多いのがC56間で、全体の約50%、C67間で約40%、C45間は約10%、C34間は極めて少ないとされています。多くが片側で、しかも右側が多く、年齢的には40歳代、50歳代に見られます。しびれは橈骨神経・正中神経に多く、尺骨神経はまれです。いずれも手腹に多いのが特徴です。知覚鈍麻はC4~5間では上腕、前腕の外側、C56間では橈骨神経の支配する母指と示指の間(合谷の辺り)、C67間では正中神経の支配する中指に現れます。咳やくしゃみの時に放散痛があると脊髄圧迫症状があると考えられるので注意が必要です。 

    なお、広義の頸肩腕症候群は、「頚椎症」ばかりでなく「肩こり」・「背中のはり」・「胸郭出口症候群」なども含み、首(頸部)から肩・腕・背部などにかけての痛み・しびれ感などを訴える全ての症例を言います。原因のはっきりしない頸肩腕症候群は整形外科の病気であるのにも関わらず、心療内科へ紹介されるケースも多いようです。これは病気の認知度の低さに加え、 MRIやレントゲン検査では発見出来ず、検査所見が少なく診断や立証が困難ということにあります。近年では、数年以上の療養を余儀なくされる重症罹患者の存在もあり、中枢神経系を介して症状が全身に広がり、 慢性疲労や疼痛、筋力低下が引き起こさせるのではないかと考えられています。 すなわち、過度の脳疲労の蓄積によって生じる病気とも言えます。

     

    頸肩腕症候群の鍼灸治療

    頚椎症ばかりでなく、頸肩腕症候群として共通の鍼灸治療があります。まず、指圧、あん摩、マッサージにより、頸部の軟部組織の過緊張と収縮を除き、頸部の循環動態の改善を図ります。その後、後頭部髪際の天柱・風池への刺鍼を行い、喉頭隆起とC6棘突起の中点にある扶突に対し、やや後方に向けて斜刺します(傍神経刺)。さらに、肩井と膏肓に対し下内方に刺鍼を施した後に施灸をします。

     

    橈骨神経障害の鍼灸治療

    神経根症状により上腕から前腕にかけて神経走行上の圧痛点が現れることがあります。橈骨神経障害の場合には、臑会、消濼、曲池、四瀆などに圧痛が現れ、しびれ感を母指・示指背面から手背橈骨側に訴えます。すなわち、東洋医学的には大腸経、三焦経の病変と捉えられます。臑会、曲池、四瀆(圧痛が見られたときのみ)に刺鍼後、著明な圧痛点に施灸をします。その他補助穴として臂臑、消濼があります。

     

  • 背中のはりや痛みの原因には、多くの方が主訴として持ったことがある「肩コリ」や「腰痛」と共通しているものが多いのです。最初に共通点について以下にまとめさせて頂きます。

    1) パソコン、携帯(スマホ)等の長時間使用: 同じ姿勢で長時間作業をしていると血流にムラができ、血流の悪い筋肉は酸素や栄養が行き渡らず、また疲労物質が蓄積しても排出できないため筋の硬結圧痛を引き起こします。いわゆる「コリ」を自覚するようになります。多くの「肩コリ」、「頸コリ」、「背中のコリ」、そして「腰痛」の多くがこれに当てはまります。

    2) 仕事や家庭でのストレス過剰状態: ストレスが高くなると交感神経の働きが副交感神経のそれよりもさらに優位になります(自律神経失調)。そうすると血管が収縮し、さらに血流の悪い場所を多く作ってしまいます。高ストレスの方に「肩コリ」、「背中のコリ」、「腰痛」が多く見られるのは、そういう理由によります。さらには、ストレスにより分泌されるコルチゾルやアドレナリンの作用により免疫系が低下し、感冒に罹りやすくなったり、扁桃炎や帯状疱疹などの健康障害が生じやすくなります。

    3) 関連痛による痛み: 頸部、背中、腰などに痛みが発生したとき、実は以下のような重大疾患が起きていることがあります。実際には痛みを感じている場所とは離れた臓器の障害が原 因にもかかわらず、脳の勘違いによって生じます。痛みを感じている部位の神経と障害部位からの痛みの信号が、同じ神経の束につながっていたり、神経束が隣合っているような場合に起きます。このような臓器の疾患は、鍼灸の対象とはなりませんので病院の専門部門でしっかり診て頂かねばなりません。

    上記の1)と2)がこれらの「コリ」に対して共通して鍼灸あん摩マッサージ指圧の対象となりますが、一方、「背中のコリ」だけが、「肩コリ」、「頸コリ」や「腰痛」などと異なっているところがあります。それは、背中には内臓のトラブル(問題)が表れるツボが存在しているということです。すなわち、内臓の病気や障害によって背中にはりや痛みを生じることがあるということなのです。これは言い換えると、背中のツボを探って硬いところや痛いところを見つけることにより、問題のある内臓を類推できるのです(東洋医学の大きな特長です)。

    私どもの治療院では、患者さんの背中を指圧・あん摩しながら内臓の問題点を診断させて頂いています。これは、病気を診断すると言うことではありません。あくまでもある臓器が弱っているとか、自律神経の働きに問題があると言ったようなことを表しています。例えば「心兪」というツボが硬く、押すと痛みを感じるような場合、ストレスが過剰に蓄積している可能性が高いとか、「脾兪」や「胃兪」が痛む場合は暴飲暴食などにより上部消化器系に問題が起きているなどといったことが実際に生じます。結果は問診と合わせて判断し、治療に当たらせて頂いています。

    背中の硬いツボや押して痛いツボを、あるいは筋肉やツボが弱っている状態(元気がない状態)を、鍼灸やあん摩マッサージ指圧により正常状態に戻してあげると、末梢循環、毛細循環が改善し、内臓の働きや胃腸が活発になり、胃もたれ、消化不良などの症状が楽になります。さらには、そういった症状に対する予防法となります。

    自律神経失調症更年期症状では、「のぼせ」や「ほてり」、そして肩が凝る、疲れやすい、イライラするといった症状が出てきます。特に、首のコリ、肩の真上の筋肉のコリは、のぼせや頭痛、頭重などの症状に関係します。さらに、背中のコリ、肩甲骨の内側の筋肉のコリは、動悸、息切れ、胸が苦しいなどの症状に関係します。背中全体のコリは寝つきが悪い、眠りが浅く目を覚ましやすいなどの不眠症や背中や腰が痛む、と言った症状と関係します。以上のような場合、強い背中のコリを取ってあげることが必要です。肩の真上、肩甲骨の内側、背中全体のコリを除去することで末梢循環、毛細循環を改善します。これによって、自律神経失調は改善され、更年期障害も出にくい体質になります。

     

  • 五十肩(四十肩)は別名「肩関節周囲炎」とも呼ばれています。肩周辺の老化現象によるものと言われていますが、患者は40~60歳の中年がほとんどであり、若年者にも高齢者にも少ないという状況です。発症の原因も治癒の原因もまだ明確にはなっておらず、症状が軽症で終わるか重症化するかの仕組みもはっきりしていません。

    五十肩は最初、肩関節付近に鈍痛がおこり、腕の可動範囲が狭くなります。次第に痛みは鋭くなり、腕を急に動かすと激痛が走るようになり、痛みのために腕を直角以上に上げられなくなったり、後ろへはほとんど動かせないなどの運動障害が起こります。生活にも支障をきたすようになり、重症化すると、洗髪、髪をとかす、歯磨き、炊事、洗濯物を干す、電車のつり革につかまる、洋服を着る、寝返りを打つ、排便後の尻の始末などが不自由となり、日常生活に大きな困難をもたらします。

    一般に、初期の症状が始まってからピークを迎えるまで数ヵ月を要し、ピークが数週間続いた後は次第に和らいできます。個人差がありますが、鋭い痛みが感じられなくなるまでに半年前後、さらにボールなど物を投げられるようになるまでに1年前後かかる場合があります。しかし、その間関節が固着したり筋が拘縮すると生活の困難さが増し、大幅なQOLの低下は免れません。

    五十肩は、鍼灸治療が効果的と言われています。ある調査によると、鍼灸で80~90%が改善したと言う報告があります。ただし、その調査では治療回数は3~9回、治療日数は13~50日となっています。

    鍼灸治療では肩周囲の経穴(ツボ)に鍼灸を施しますが、更に痛いところが前面なのか後面なのか真横なのか、あるいは全てが痛いのかによりそれぞれの経絡に沿った治療穴を追加します。また、肩の痛みが増すところに腕を上げていきその角度で鍼灸を行います。そうすると痛みが軽減するので徐々に可動域を拡げていきます。いずれにしてもその場ですぐ直るものではなく、ある程度の長期治療が必要となります。

     

     

    五十肩の共通鍼灸治療

    鍼: 巨骨、臑兪、臑会、肩井、膏肓、曲池
    灸: 臑会、曲池、肩井、膏肓

    補助鍼灸治療

    上腕三頭筋長頭痛
    鍼: 消濼、天宗、下肩膠、四瀆、(下肩髃)
    上腕二頭筋長頭痛
    鍼: 肩前、天府、(孔最)
    烏口突起部痛
    鍼: 烏口、天泉
    項背痛
    鍼: 肩外兪

     

    療養指示

    関節の運動制限の回復には、関節の自己運動が必要です。過度な運動に至らない範囲で、可動域を徐々に拡げられるよう運動するのが良いでしょう。また、疼痛患部は冷たい湿布よりも、ホッカイロなどで持続的な保温に努めるのが効果的です。就寝時に腕が肩を引っ張って痛みが増す場合には、タオルなどで腕が下がらぬよう台を作ると痛みの緩和に役立ちます。

     

     

  • あるアンケート調査によると、「肩こりがある」と答えた人は9割以上にもなり、特に女性は、60歳以上の98%を筆頭にあらゆる世代で90%以上の方が「ある」と答えています。その原因として考えられるのは、1位「長時間の同じ姿勢」(23.1%)、2位「パソコン・携帯の使用」(20.1%)、3位「運動不足」(16.4%)という結果でした。しかし、肩こり対策を十分にとっている方は決して多くありません。自分で肩を揉んだりストレッチをしている方は全体の30%前後であり、マッサージや病院に行く方は15%程に過ぎません。

    現代社会人は、会社でパソコンを1日中凝視し、通勤の行き帰りにはずっと携帯(スマホ)を操作しているという状況ですから、肩こりがない方がおかしいくらいです。

    肩こりは慢性化すると自覚症状が薄れていき、肩こりはないと思っている方も多いものです。しかし慢性的肩こりは全身の血液の流れをそこで滞留させているわけですので、知らず知らずのうちに多くの不定愁訴を作ってしまっています。

    また、肩こりは、上記のようなパソコン・携帯電話依存によるものだけではありません。ストレスなどによる「自律神経失調」が原因の場合も多く見受けられます。ス トレスを受けると交感神経が優位となり、血管が収縮し、肩こりが悪化したり、緊張性頭痛を招いたり、ホルモンバランスの影響で月経不順やめまい、ほてりを 感じることもあります。こんなとき病院で検査を受けても、たいていデータの異常は見つかりません。

    それに対し、鍼灸あん摩マッサージ指圧には自律神経のバ ランスを整える、すなわち副交感神経を優位にする働きがあります。鍼灸やあん摩マッサージ指圧を受けると全身が身体的にリラックスすると同時に精神的にもリラックスするのはこの働きによるものです。

    肩こりの治療は、決して肩だけを対象として行うのではなく、近くの首筋や背中はもちろん、手や足にまで視野に入れて治療する必要があります。それは、肩を通っている経絡が足や手にも通じているからです。例えば、肩を通る経絡(ツボの経路)は、肺経、大腸経、小腸経、および三焦経などがありますが、これらはいずれも手からつながっています。また両側の肩甲骨の間は膀胱経と言う経絡が通っていて、これは足につながっています。極論すると、肩こりを手足のツボで直すこともあるわけです。さらに肩こりは首筋にも影響するので、頭との境界線である天柱、風池、完骨などを治療します。

    東洋医学では、肩こりの治療に限らず全身治療から入り、各所に見られる問題点に対し十分に対処した上で最後に局所の治療を行います。治療には経絡理論に則った「本治法」と呼ばれる全身のバランスをとる治療を含みます。それに対し局所を対症療法的に行うのを「標治法」と呼んでいます。この両方の治療法を症状により使い分けて行えるのも東洋医学の特長の一つです。本治法を行うことにより治療効果が長く継続すると言われています。

    肩こりがひどくてつらい方ばかりでなく、身体の不調を訴える方は一度鍼灸あん摩を受けてみてはいかがでしょうか。