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腰痛
2016年12月5日
あるアンケート調査によると、一般の方で「腰痛症がある」と答えた人は全体の実に約70%にもなります。特に女性は、若い世代から高齢者までどの世代でも70%前後の方が「腰痛症がある」と答えています。さらに、80%以上の方が「腰痛になったことがある」と答えています。腰痛は生活不便度が高いからか、腰痛症を持つ方の25%が病院やマッサージに行っているようです。
腰痛には慢性的な腰痛症と、ぎっくり腰のような急性腰痛症があり、救急の場合の対処法が異なるので注意が必要です。「急性腰痛症」では、すばやく患部を冷やして炎症を最小限に抑える必要があります。しかし急性腰痛症が数日経過して治まっている場合や「慢性腰痛症」の場合には、誤って湿布薬などで患部を冷やしてしまうと血流が阻害されかえって症状が悪化してしまいます。
腰痛には危険な病気が潜んでいることもありますので、気をつけなければなりません。下肢のしびれや麻痺などの神経症状、または発熱などを伴っている場合は、迷わず病院に行って診てもらってください。腰椎ヘルニアを初め、骨や内臓に転移した癌、膵炎、胆嚢炎・胆石、胃・十二指腸潰瘍の可能性がないとは言い切れません。このように内臓の病気が別の場所の痛みとなって現れるのを「関連痛」と呼んでいますが、腰や肩などは関連痛の出やすい場所ですので注意が必要です。
腰痛の原因
変形性脊椎症
脊椎は加齢に応じて水分を失い、体質、過労、外傷などと相まって椎間軟骨に変性(荷重面の硬化、靱帯付着部の骨新生)が生じます。朝一番で腰痛があり、動作開始時や長時間の同一姿勢で痛みが増し、適度な運動で軽減します。また、安静、入浴でも軽減します。鍼灸治療は効果的ですが、慢性的な腰痛は数ヵ月の治療を要する場合もあります。
椎間板ヘルニア
椎間関節の髄核が線維輪を破って脱出し、神経根を圧迫して痛みを生じるものです。そのため、坐骨神経痛を伴うことも多いです。比較的若い年代に多く、重量物を持ち上げたり、スポーツなどの力学的負担がきっかけになることも少なくありません。
腰部脊柱管狭窄症
脊髄神経の通り道である脊柱管が、骨の変形や腰の靭帯が分厚くなったりして狭くなることで、神経症状が出現するものです。脊柱管が狭くなる原因として、加齢に伴い骨や靭帯が徐々に変形してくる場合や、腰の骨の骨折後の治癒過程で生じてくる場合などがあります。
特徴的な症状として間欠性跛行というものがあります。これは歩いているうちに脚の痛みや痺れが強くなり一時的に歩くのが困難になるけれども、体を前にかがめたりしゃがみこんだりすればまた歩くことができるというものです。つまり腰椎椎間板ヘルニアとは逆で、立っていたり歩いていたり腰を反ると症状が悪化し、体を前に屈めたり座っている方が楽になるものです。腰椎椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症はレントゲンで大方予想はできますが、実際に神経が圧迫されているかどうかはMRIを撮影してみなければわかりません。
腰椎すべり症
腰椎すべり症は1つの腰の骨だけが前方のずれてしまう状態のことです。このズレにより、腰の骨の位置関係が変わり、腰の神経や関節の動きに影響を与えてします。
原因としては
① 脊椎分離症で安定性を失った背骨が前に滑り出てしまう
② 椎間板や関節など動く部分が変形してしまい、前に滑り出てしまう
その他にも、生まれつき背骨の形に異常がある場合や、交通事故などの外傷から生じる場合もあります。
腰椎分離症
腰痛分離症は青少年期のスポーツが原因と考えられており、小学生〜高校生にかけて多い疾患です。腰椎分離症とは、椎弓という腰の関節を構成している部分が骨折してしまうものです。成長期の活発な運動により、腰の過度な使用となり、関節に負担がかかり骨折してしまいます。多くは腰を反って、ひねる動作で痛みが出現します。野球のスイングやバレーボールのスパイクなどひねる動きが多いスポーツに好発します。
腰椎分離症はいわゆる骨折している状態であるため、硬性(硬い)コルセットを装着し、骨が繋がるまで安静にしなければなりません。小学生で見つかった腰椎分離症に関しては安静により治癒が見込めますが、高校生になるとこの骨が治癒する確率は下がってしまいますので、早期発見が重要になってきます。もし、スポーツをしていて腰をひねる動きで痛みがある場合は、一度レントゲン検査を受けた方が良いかもしれません。この腰椎分離症を発症し、骨が繋がらなかった場合は、将来的には腰椎分離すべり症というものに発展してしまう可能性があります。
圧迫骨折
腰椎圧迫骨折は腰椎に屈曲圧迫力が加わり、本来四角形である背骨がくさび形に潰れてしまう状態です。腰が勢いよく曲がる力が加わる状態であるため、勢いよく転倒して尻もちをついてしまったり、ラグビーなどのスポーツでタックルした時や、高所からの転落などで生じます。また高齢者の場合は、骨粗しょう症を合併していて、骨がもろくなっている場合は、くしゃみをしただけでも生じる場合があります。
圧迫骨折が生じた場合は、硬性コルセットを作成し、腰に曲がる負担がかからないようにします。また痛みに応じてですが、腰を曲げる腹筋や股関節の前の筋肉を鍛えることは禁忌で、背筋の筋力を鍛える運動療法を実施していきます。
■非特異的腰痛
筋・筋膜性の痛み
筋・筋膜性腰痛とは筋肉の問題による腰痛のことです。筋肉は筋膜という膜状の組織に包まれています。この筋肉と筋膜に何らかの問題が生じ、傷んでしまい痛みを感じるものです。筋肉はゴムの様に伸び縮みし、この筋膜の間を滑るように動いています。しかし筋肉の使いすぎや、急に力を入れて痛めてしまうことによって筋肉には筋スパズムという凝りが生じます。この凝りが筋肉と筋膜の動きを悪くし、筋肉内の血液循環を悪くし、痛みを生じさせます。
椎間関節性の痛み
腰椎は全てで5個あり、それぞれの骨の間には椎間関節という関節が存在しています。この関節に負担がかかり痛みが生じる痛みが椎間関節性の痛みです。腰椎の関節は、関節の向きからして体を前に曲げる・後ろに反らすことを得意としています。しかし、体を捻る・横に倒すといった動きは不得意で、関節に負担をかける形になります。関節に負担がかかることにより関節の軟骨が擦り減ったり、炎症を起こしたり、関節の周りにある靭帯などを痛めてしまい痛みにつながってしまいます。
筋・筋膜性腰痛と椎間関節性腰痛に関してはレントゲンやMRIに異常が写ることはありません。痛みの出現する動きや、押さえて痛い箇所などから判断してどこの組織が痛んでいるのか確認して判断していきます。
椎間板性の痛み
椎間板性の痛みは椎間板ヘルニアと似ています。椎間板ヘルニアは椎間板の中の水分が飛び出してしまった状態ですが、飛び出す手前の時に感じるものが椎間板性の痛みです。椎間板の周りには水分が出ないように補強している繊維が重なり合って層を作っています。この層の中で、最も外側にある層に痛みを感じる組織が存在しています。この層が何らかの要因で傷ついたりすると痛みを感じるようになります。
椎間板は構造上、前側が潰れるのと捻れるストレスには弱くできています。つまり普段から腰を丸く姿勢を長くとる、腰が丸くなった状態のまま体を捻るような作業をしている人は痛めやすくなってしまいます。体を曲げると腰が痛い、さらに体を捻るともっと痛くなる。しかし脚のしびれなどは特に感じないという人はこの椎間板が痛んでいるかもしれません。ゆくゆくは椎間板ヘルニアに発展してしまう可能性も秘めていますので、姿勢や体の使い方に注意し、体のストレッチをして予防する必要があります。
仙腸関節性の痛み
仙腸関節とは骨盤と背骨の一番下にある仙骨をつなぐ関節のことで、下半身と上半身をつなぐ、土台となる関節です。この仙腸関節の周りには靭帯や関節包という組織が豊富に存在しており、そこには痛みを感じる組織がたくさんあります。この仙腸関節は他の関節とは異なり、2〜3ミリしか動かないと言われています。この関節が不意に大きく動いてしまうことで捻挫を起こしたり、関節が引っかかってしまったりすることで痛みを感じるようになります。多いのが、女性の生理の時や出産前後での腰部痛がこれに当たります。生理の時は女性の骨盤周辺の靭帯は緩み、関節が不安定な状態になり、周りの筋肉に過剰な負担がかかります。また出産時にはこの仙腸関節が外れて骨盤が開かなければ子供が出てくることができませんので、靭帯が傷ついて、これも関節が不安定な状態となっています。出産時には一度不安定な状態になりますが、時間経過とともに元に戻りますので、心配は要りません。
仙腸関節の痛みは一般的なヘルニアや脊柱管狭窄症よりは少し下の方の骨盤に近い箇所が痛くなり、お尻や太もと、股関節の付け根の方まで痛みが広がることもあります。仙腸関節痛の判定は関節を直接動かしたり、押さえたりして痛みが再現できるか確認します。治療としては炎症の緩和や鎮痛を目的とした投薬や注射、骨盤周囲の安定化を図る骨盤ベルトや軟性コルセットを使用すると症状の緩和が図れます。
◇心因性の痛み
最近の研究では腰痛と心理面は深く影響していることがわかってきています。仕事をしていて腰痛を有している場合、その腰痛が治りにくい要因としてうつ状態、仕事上の人間関係の問題、仕事上の不満などが挙げられています。また、腰痛が軽いにも関わらず、重度の機能障害(日常生活への悪影響)を持つ患者は、高齢、ストレス、うつ状態、過労、仕事の内容・収入・環境への低い満足度、人間関係の不良を抱えており、その患者の社会的背景が影響を及ぼしていることも報告されています。現代の社会はストレス社会で、仕事や将来への不安・不満、家庭を含む周囲環境のストレスに対するケアも必要ということが分かります。
腰痛治療
腰痛の治療は、肩こりと同様に全身治療から入ります。全身の気血の巡りを良くし、自律神経のバランスをとった上で局所治療に入った方が鍼灸の治療効果が長持ちします。鍼灸を痛いところに施すと、その部分の血行を促進し余分な神経刺激を抑えるばかりでなく、エンドルフィンなど脳内モルヒネと呼ばれる鎮痛物質の分泌を促すことにより痛みを抑えることが可能となります。鎮痛剤はよく効きますが、薬には胃腸障害などの副作用があります。それに対して鍼灸は副作用のない自然な治療が可能です。
仙腸関節は体幹の関節では可動域の少ない関節ですが、ここの機能異常が腰痛の原因となっていることが多いものです。従って、鍼灸に整体手技の併用によりさらに治療効果が上がります。整体手技で仙腸関節の可動域を拡げることにより、腰痛の治療と腰痛の予防も兼ねることが可能となります。
腰痛の鍼灸治療
鍼: 腎兪、大腸兪、上飛揚(外側腓腹筋)、追加で気海兪、関元兪、委中、志室
灸: 腎兪、大腸兪 鍼との併用も有用(特に慢性痛)
腰痛の療養指示
急性腰痛の場合であっても、重症な病気や怪我が原因だったり、動けないほどの強い痛みがあったりする場合でなければ、動ける範囲で動くことが推奨されています。無理のない範囲で体の動きを保つようにしましょう。急性腰痛は腰の周辺の組織が何らかのダメージを受けた直後に発症するので、症状が起きた直後は温めるのではなく冷やすことによってダメージを受けた部分の炎症を和らげます。
痛いからと言って全く体を動かさなかった場合、筋力が低下して血行不良を引き起こします。また、筋肉を使わないと筋肉は緊張して血流が悪くなり、さらに痛みを長引かせる原因になります。そのため、適度に体を動かしたり、筋肉をほぐすストレッチや筋肉を鍛えるトレーニングを行ったりします。さらに、筋肉の血行不良への対処法として、腰を温めることが勧められます。また、心理的な要因も関係することがあるため、ストレスを溜めないよう生活の工夫をする必要もあります。
慢性腰痛の場合は、できるだけ筋肉をほぐして血流を改善し、動きやすい体を保って活動的な生活を送ることが大切です。確実に血行を改善する方法はお風呂に浸かって全身を温めることです。しかし、余り熱い湯に入ったりするのは逆効果となりますので注意が必要です。入浴する場合は、38℃程度の低温にゆっくり入り、あとは身体を冷やさないようにして休みます。腰だけを温める場合は、身近にある使い捨てカイロを使用したり、お湯や電子レンジで温めることができるホットパック*を活用したりすると良いでしょう(*温熱療法の一つとしてよく用いられ、保温材が入った物の総称)。ホットパックを使用する場合は、ホットパックが腰に当たるように仰向けに寝て、腰を圧迫しながら温めるホットマッサージもおすすめです。
2016年12月5日
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