最新情報&ブログ
-
2022年3月2日
肘トンネル(肘部管)症候群
尺骨神経が肘の内側の神経溝内にある部を肘トンネルと言いますが、この尺骨神経が圧迫されたり、牽引されることで神経の知覚、運動障害を起こします。以下のような原因があります。
- ・ 神経を固定している靱帯やガングリオンなどの腫瘤による圧迫
- ・ 加齢に伴う肘の変形
- ・ 子供のときの骨折による肘の変形
- ・ 野球や柔道などのスポーツ
麻痺の進行により症状が異なります。初期は小指と環指の一部にしびれた感じがでます。麻痺が進行すると手の筋肉がやせてきたり、小指と環指の変形が起きてきます。
診断は、肘の内側を軽くたたくと小指と環指の一部にしびれ感がはしります。肘の変形がある場合には、X線(レントゲン)検査で肘の外反変形や関節の隙間の狭いことがわかります。
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)
前腕の回内、回外運動、または手指運動を繰り返す頻度の激しいとき、上腕骨外側上顆部に疼痛が生じます。主に短橈側手根伸筋の起始部が肘外側で障害されて生じると考えられています。 この短橈側手根伸筋は手首(手関節)を伸ばす働きをしています。
ものをつかんで持ち上げる動作やタオルをしぼる動作(前腕の回内、回外運動)をすると、肘の外側から前腕にかけて痛みが出現し、握力が低下します。多くの場合、安静時の痛みはありません。
肘を伸ばしたまま検者の力に抵抗して手首を伸ばしてもらうトムゼンテストや、肘を伸ばしたまま手で椅子を持ち上げてもらうチェアテストのような試験で診断します。いずれの検査でも肘外側から前腕にかけての痛みが誘発されたら、テニス肘と診断します。
野球肘、ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)
肘の内側上顆という部分の障害で、使いすぎ症候群の代表的な病態です。円回内筋腱の付着部あるいは筋頭部に疼痛がある場合は内側の障害であり、肘の内側に過剰な負荷がかかることで靭帯が引っ張られ、腱や軟骨が損傷・断裂することで起こります。肘を伸展し手指を背屈した状態で固定し、これに抵抗して屈しようとするとき内側上顎部に痛みを引き起こします。
また、外側の障害として、骨と骨が衝突することで、骨や軟骨が剥がれたり痛んだりすることで発症する離断性骨軟骨炎があり、母、示指等の腱鞘炎や屈筋の抵抗運動で痛みが出ます。
投球時のフォロースルーの際に、肘の後方で骨同士が衝突することで、発症する肘頭疲労骨折や、柔道家、槍投げ選手には尺骨鈎状突起内側の上腕筋付着部に、剣道選手や家庭内で作業をする婦人、介護に携わる人などには上腕三頭筋の付着部に、それぞれ疼痛を起こすことがあります。
肘関節痛の共通鍼灸治療
鍼灸: 曲池、少海
補助治療
外側上顆部痛
鍼: 外側上顆部から下方に数鍼
灸: 圧痛点
内側上顆部痛
鍼: 内側上顆部から下方に数鍼
肘窩部痛
鍼: 肘窩部から上方に数鍼
肘頭部痛
鍼: 肘頭部から上方に数鍼
療養指示
急性の肘関節の疼痛の場合は運動を休止することが重要です。慢性的なものでも運動量を減らすか休まないと快方に向かいません。リウマチの場合は治療期間を年単位で予定しなければなりません。関節部に炎症がなければ保温するのが望ましいです。
-
2022年2月16日
不妊の原因
不妊症とは、夫婦が妊娠を希望して1年以上性生活を行っているにもかかわらず、妊娠しない場合を言います。原因は様々ですが、女性の側だけではなく男性側に不妊の原因がある確率も約半分あると言われています。これらの原因のうち、機能障害によるもの、および臓器などの組織の障害であっても治癒が可能なものが鍼灸の対象になります。
女性側の原因
排卵障害: 排卵がうまくおこらないことを排卵障害と言い、その原因は高プロラクチン血症、多嚢胞性卵巣症候群、卵胞刺激ホルモンの分泌低下、痩せすぎや太りすぎ、短期間の大きな体重変化、激しすぎる運動、ストレスなどがあります。
子宮頸管の精子通過障害: 精子は子宮頸管、子宮、卵管を通って卵子までたどり着きますが、子宮頸管を精子が通過できないことを精子通過障害と言います。子宮頸管は排卵時期になると頸管粘液の分泌が多くなりますが、十分に分泌されない場合に精子の通過が妨げられてしまうことがあります。また、精子に対する抗体が分泌されて精子の通過が妨げられてしまうこともあります。
卵管障害: 感染症等により卵管閉塞・狭窄、卵管周囲の癒着が起こり、卵管に卵子が取り込まれにくくなったり、精子が通れなくなったりすることを卵管障害と言います。先天異常として卵管欠損症等があります。
子宮着床障害: 何らかの原因により受精卵が移動や着床できないことを子宮着床障害と言い、その原因は子宮に関する器質的原因と、自己抗体による免疫異常の原因とがあります。
子宮内膜症: 子宮内膜が子宮以外の場所にできてしまうことを言い、特にチョコレート嚢胞は妊娠の妨げになる大きな原因と言われています。
男性側の原因
造精機能障害: 精巣やホルモン分泌異常により精子をうまくつくり出せないことを造精機能障害と言い、無精子症、乏精子症、精子無力症などがあります。
精路通過障害: 何らかの原因により精子が外に出てこられないことを精路通過障害と言い、その原因は感染症による炎症、手術の際の精管損傷等による精管の欠損・狭窄・詰りなどがあります。
性機能障害: 勃起不全、膣内射精障害のことを性機能障害と言い、その原因はストレスや動脈硬化、糖尿病などの病気です。
不妊の鍼灸治療
共通治療 刺激が過度にならない程度の刺鍼や灸を施す
鍼灸: 腎兪、次膠、関元、曲骨
原発性不妊 明かな臓器の病的障害がないにもかかわらず、不妊が2年以上継続しているような場合に共通治療に追加して施術
鍼: 関元兪、水道
灸: 水道
温灸: 下腹部、腰仙部(みそ灸、にんにく灸、しょうが灸などの隔物灸が効果的)
習慣性流産 共通治療に追加して施術
鍼: 関元兪、交信
灸: 命門
切迫流産 共通治療に追加して鍼灸共に施術
鍼: 水道
灸: 然谷
療養指示
生活習慣、特に食生活について留意が必要です。妊娠に特に必要な栄養素であるたんぱく質、ビタミンA,B,E、鉄、亜鉛、カルシウム、コレステロールを積極的にとること、特に妊娠する1ヶ月前から摂取する必要があるのは葉酸です。
また、体重が標準体重の120%以上ある場合には不妊症の相対リスクは2.1倍と高くなり、逆に標準体重の85%以下となった場合も相対リスクは4.7倍と高くなるとの報告があります。肥満女性では主に脂肪細胞で産生されるエストロゲンが過剰になりやすいこと、痩せすぎの女性では十分なエストロゲンが産生されにくいことが不妊の原因となるといわれています。
