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2018年6月22日

  • 不眠とは、睡眠と覚醒のリズムが破れ主観的な睡眠感を得られないことを言い、以下のような形態に分類できます。

    ①    就眠障害(入眠障害):床に入ってもなかなか眠ることができず、甚だしいときは一睡もできないことがある。神経質者、神経症者の不眠に代表される

    ②    熟睡障害(中間覚醒):眠りが浅く、夜中に何度も目が覚めるもの。脳器質障害、うつ病、統合失調症、また中間覚醒は老年性不眠症にも見られる

    ③    早期覚醒:早朝に目覚めてしまい、その後眠れないもの。躁鬱病に多く見られるが、老年性不眠にもある

     

    不眠症はその発生機序により以下の種類に分類されます。

    ①    一過性不眠症は、急性のストレス、ショックなどにより誘発されるもので、鍼灸治療に適する

    ②    持続性不眠症は慢性的な緊張、不安などによるもの。鍼灸治療により自律神経系を刺激することで改善する

    ③    症候性不眠は各種の疾患に伴う睡眠障害で、特にうつ病などの精神疾患によるもの、内科的、あるいは外科的な痛みによるものが挙げられる。あるいは、発熱、掻痒感、咳、痰、呼吸困難、下痢、嘔吐なども不眠の原因になる。これらは原因疾患の治療が優先されないと治癒には至らない

     

    不眠症(睡眠障害)の鍼灸治療

    鍼灸治療は精神的な興奮や自律神経の乱れを鎮め、全身調節をおこない正常な身体のリズムを取り戻すようにします。不眠障害の初期の方や軽い症状の方は、鍼灸治療が極めて効果的です。

    鍼は太陽、完骨に一定時間の置鍼、灸は完骨のツボを使います。また、補助的に背後兪穴で肺兪、心兪、腹部の中脘、前腕内側の内関を使います。灸は眠った気がしないという人に厥陰兪が有効です。

    東洋医学では、不眠症(睡眠障害)は「失眠」または「不寝」といい、心・肝の機能の変調によって起きると考えています。心による不眠は寝つきが悪く、寝ても夢見が多く、肝による不眠は眠りが浅く、よく目を覚まします。原因としては,生まれたときからの体質が弱い、食事の不摂生や感情の乱れ、ストレス、慢性病による体力の低下などが考えられます。

     

    イライラによる不眠症(肝)

    このタイプは神経質で怒りっぽい。口が渇く、目が赤くなり、口が苦い、便秘などの特徴があります。

    鍼灸治療のポイント:肝経のツボとして肝兪、期門、蠡溝、胆経の陽陵泉を使って治療を行います。

     

    身体の抵抗力が低下した不眠症(肺)

    上気道が弱く感冒に冒されやすく気管支が弱くて咳・痰が出やすい、皮膚の抵抗が弱く虫刺されやかぶれが起きやすい、下痢と便秘を反復するなどの傾向があります。

    鍼灸治療のポイント:肺経の中府、太淵、脾経の三陰交に鍼とお灸の治療を行います。

     

    体力低下による不眠症(腎)

    病気の後や加齢によるものが多く、眠りが浅くなる、寝つきが悪くなるタイプです。

    鍼灸治療のポイント:腎兪、関元、復溜など腎経に軽く刺激でお灸と鍼を行います。

     

    生活習慣の改善

    精神疾患など症候性の不眠症は別として、精神生理学的な要因による不眠症は生活習慣を改めることで改善します。以下にその要点を掲げておきます。

    ①    寝る前には、興奮する会話やTVでのスポーツ観戦などを避ける

    ②    夜は刺激物であるカフェイン(お茶やコーヒーなど)やニコチン(煙草)の摂取を止める

    ③    寝る前は軽い音楽を聞いたり、精神が休まるような内容の書を読んでリラックスする

    ④    規則正しい食事(寝る前の飲食をしない)と規則的な運動習慣

    ⑤    眠くなってから床に就くこと。就寝時刻にこだわり過ぎない

    ⑥    毎日同じ時刻に起床する(早寝早起きの生活習慣)、さらに朝に太陽の光をしっかりと浴びて体内時計のリズムを正しく動かす

    ⑦    眠ろうとして過度の努力をせず目を閉じて静かに身を横たえておく

     

     

     

  • ストレス関連障害は、ストレス体験をしてから症状が出るまでと症状の持続期間、ストレスの程度によって、急性ストレス障害、外傷後ストレス障害、適応障害の3つに大きく分けられます。急性ストレス障害(ASD)と心的外傷後ストレス障害(PTSD)は地震、洪水、火事のような災害、または事故、テロ、戦争といった人災、あるいは、監禁、強姦など犯罪の被害、強い恐怖感を伴った体験や生命の危険にさらされた体験、あるいは、いじめ、体罰、虐待、DV、パワハラ、モラハラ、セクハラなど人としての尊厳が損なわれるような非常に強いトラウマ(心的外傷)が原因となりますが、外傷的な出来事は必ずしも直接的な体験だけとは限りません。テレビやインターネットなどで悲惨な場面を観たり、人によっては話を聞いただけで急性ストレス障害の状態になってしまう事もあります。

    急性ストレス障害、あるいは外傷後ストレス障害は、ストレス体験直後から3ヵ月以内に発症します。症状が、強い恐怖、無力感または戦慄を伴う出来事の後、1ヵ月以上持続している場合には心的外傷後ストレス障害、持続期間が1ヵ月未満の場合には急性ストレス障害と診断されます。なお、心的外傷には事故・災害時の急性トラウマと、児童虐待など繰り返し加害される慢性の心理的外傷があります。ASDやPTSDと判断されるのは、以下の3つの基本症状です。

    • 過覚醒: 精神的不安定による不安、不眠など
    • 回避: トラウマの原因になった障害、関連する事物に対して避ける傾向
    • 再体験: 事故・事件・犯罪の目撃体験等の一部や、全体に関わるフラッシュバック

     

    ASDやPTSDの症状は多種多様で、上記以外にも以下のような自律神経失調症状が現れます。

    ○ 精神症状

    イライラする、落ち込みやすい、感情の麻痺、集中力の低下、意欲の低下、記憶力の低下、注意力がない、不安感が強い、ちょっとした事ですぐあせるなど

    ○ 全身症状

    疲れやすい、疲れが取れない、めまい、立ちくらみ、微熱、不眠、食欲不振、ほてり、冷え、冷や汗など

    ○ 呼吸器系

    息苦しい感じ、息ができない、酸欠感、息切れしやすいなど

    ○ 循環器系

    動悸、胸部圧迫感、めまい、立ちくらみ、のぼせ、冷え、血圧の上昇・低下など

    ○ 消化器系

    胃もたれ、腹部膨満感、腹鳴、胃の不快感、吐き気、食欲不振、便秘、下痢、ガスがたまるなど

    ○ 泌尿器系

    頻尿、尿が出にくい、残尿感など

    ○ 生殖器系

    インポテンツ、早漏、射精不能、生理不順、外陰部のかゆみなど

    ○ その他

    頭痛、頭重感、首・肩のこり、目のピントが合いにくい、涙目、まぶしさ、耳鳴り、耳の閉塞感、口が渇く、のどの異物感、のどの苦しさ、手足の冷え、手足のほてり、顔のほてり、手足の発汗、手のふるえなど

     

    一方、適応障害は、ストレス要因により日常生活や社会生活、職業・学業的機能において著しい障害がおき、一般的な社会生活ができなくなるストレス障害で、災害や人災の他に個人的問題、家族関係や職場のトラブルなどもストレス要因になります。不安、抑うつ、焦燥、過敏、混乱などの情緒的な症状のほか、不眠、食欲不振、全身倦怠感、易疲労感、ストレス性胃炎、頭痛、吐き気、発熱、体のふるえ、精神運動抑制など、ストレス反応としての身体的症状が自覚症状としてあらわれます。軽度のうつ病と区別がつきにくく、放置しているとうつ病になり、悪化する場合があるので注意が必要です。性格が真面目で責任感があり、忍耐強い人ほどかかりやすいと言われています。また、適応障害がもとで発生する身体的な異常は、自律神経失調症や心身症ともよばれます。

     

    3種類のストレス障害(まとめ)

    急性ストレス障害

    (ASD)

    外傷後ストレス障害

    (PTSD)

    適応障害
    発症時期 ストレス体験直後~1ヵ月以内

     

    ストレス体験1ヵ月以降~3ヵ月以内

     

    ストレス体験後~3ヵ月以内

     

    経過 2日間~1ヵ月 1ヵ月以上~(1年以上) ストレス終結後6ヵ月以内(ただし、うつ病などに移行することが多い)

     

    程度 極度のストレス

     

    極度のストレス

     

    いかなるストレスでも

     

    症状 解離性症状、再体験、外傷関連の刺激の著しい回避、強い不安症状/覚醒亢進 再体験、外傷関連の刺激の持続的回避・全般的反応麻痺 抑うつ、不安、行為の障害

     

    極度の緊張状態で交感神経優位が続くと、全身の血液循環等に障害が生じ、身体の各部に痛みを感じやすくなります。また、姿勢も崩れてくるため、身体各部位のバランスが乱れ、頸部や腰部の筋肉等が疲れやすくなります。鍼灸以外の一般的なストレス障害の治療法としては、抗不安薬、睡眠導入剤、抗うつ薬、抗精神病薬など薬物による治療やカウンセリング治療ですが、身体的な症状を和らげるためには、ストレス要因を排除するだけでなく、ストレス要因や「自分自身」を客観視し、認知評価を変えていくような方法が大切です(認知行動療法)。さらには、リラクセーション、自律訓練法(自己暗示をして心身をリラックスさせる方法)などによる治療法があります。適度な運動などによって情緒的、身体的興奮を鎮めることも効果があります。

     

    鍼灸治療法

    ストレス障害を持つ方の多くが身体の痛みを伴っています。筋痛、関節痛などですが、原因は過度の精神的緊張による自律神経のアンバランスにあります。このとき、鍼灸によって身体症状を直していく過程で、精神的症状も軽くなっていきます。まさに「心身一如」そのものを表しています。

    鍼によるストレス障害の直接的な治療法としては、「自律神経失調症」の「神経系愁訴」を参照いただければ良いかと思いますが、それ以外にも精神的安定を図る経穴として、以下のようなものが効果的です。

    内関・神門・労宮・湧泉・太衝・太谿・三陰交・豊隆・足三里・百会・四紳聡・神庭・印堂・大椎・心兪・肝兪・・脾兪・胃兪・腎兪・志室・膻中・期門・中脘

     

     

  • 頚椎症は、頸椎(首の骨)の変形や椎間板の変性によって引き起こされる病気で、主に加齢によって起こるとされています。頚椎症は変形性脊椎症や頸椎椎間板ヘルニアなどのような神経根症が主ですが、脊柱管内の圧迫により症状が出る脊髄症も含まれます。いわゆる頸肩腕症候群全体の約50%を椎間板ヘルニアなどの頚椎椎間板症が占めると言われています。頚椎椎間板症の中で最も多いのがC56間で、全体の約50%、C67間で約40%、C45間は約10%、C34間は極めて少ないとされています。多くが片側で、しかも右側が多く、年齢的には40歳代、50歳代に見られます。しびれは橈骨神経・正中神経に多く、尺骨神経はまれです。いずれも手腹に多いのが特徴です。知覚鈍麻はC4~5間では上腕、前腕の外側、C56間では橈骨神経の支配する母指と示指の間(合谷の辺り)、C67間では正中神経の支配する中指に現れます。咳やくしゃみの時に放散痛があると脊髄圧迫症状があると考えられるので注意が必要です。 

    なお、広義の頸肩腕症候群は、「頚椎症」ばかりでなく「肩こり」・「背中のはり」・「胸郭出口症候群」なども含み、首(頸部)から肩・腕・背部などにかけての痛み・しびれ感などを訴える全ての症例を言います。原因のはっきりしない頸肩腕症候群は整形外科の病気であるのにも関わらず、心療内科へ紹介されるケースも多いようです。これは病気の認知度の低さに加え、 MRIやレントゲン検査では発見出来ず、検査所見が少なく診断や立証が困難ということにあります。近年では、数年以上の療養を余儀なくされる重症罹患者の存在もあり、中枢神経系を介して症状が全身に広がり、 慢性疲労や疼痛、筋力低下が引き起こさせるのではないかと考えられています。 すなわち、過度の脳疲労の蓄積によって生じる病気とも言えます。

     

    頸肩腕症候群の鍼灸治療

    頚椎症ばかりでなく、頸肩腕症候群として共通の鍼灸治療があります。まず、指圧、あん摩、マッサージにより、頸部の軟部組織の過緊張と収縮を除き、頸部の循環動態の改善を図ります。その後、後頭部髪際の天柱・風池への刺鍼を行い、喉頭隆起とC6棘突起の中点にある扶突に対し、やや後方に向けて斜刺します(傍神経刺)。さらに、肩井と膏肓に対し下内方に刺鍼を施した後に施灸をします。

     

    橈骨神経障害の鍼灸治療

    神経根症状により上腕から前腕にかけて神経走行上の圧痛点が現れることがあります。橈骨神経障害の場合には、臑会、消濼、曲池、四瀆などに圧痛が現れ、しびれ感を母指・示指背面から手背橈骨側に訴えます。すなわち、東洋医学的には大腸経、三焦経の病変と捉えられます。臑会、曲池、四瀆(圧痛が見られたときのみ)に刺鍼後、著明な圧痛点に施灸をします。その他補助穴として臂臑、消濼があります。