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下痢
2018年6月29日
正常な腸では「蠕動(ぜんどう)運動」により、腸の内容物を肛門側に送ります。内容物が腸を通過する際に、含まれる水分が体内に吸収され適度な水分を含む便になります。理想的とされるバナナ状の便の水分量は70%~80%ですが、これが80%~90%になると通常より少し軟らかい状態の「軟便」に、水分量が90%を超えて液状またはそれに近い状態の水様便を「下痢便」と言います。下痢便や軟便を繰り返し、腹部不快感や腹痛を伴う状態を「下痢」といいます。排便の回数には関係ありません。
腸の「ぜん動運動」が過剰になった場合、腸の内容物が急速に通過するため水分の吸収が十分に行われません。そのため、液状の糞便となり下痢便や軟便になります。また、腸から体内への水分吸収が不十分な時や、腸からの水分分泌が増えると、腸の中の水分が異常に多くなり下痢便や軟便になります。
日常生活から考えられる原因
- 暴飲暴食
発熱をともなわない下痢はほとんどが飲みすぎ、食べすぎ、冷えが原因です。疲れているときは特に消化機能が弱っているので、下痢になりやすくなります。
- アルコールや刺激の強い食べ物
アルコールや、辛みの強い刺激物などを摂取すると、胃酸が多く分泌されすぎて、胃壁の粘膜を傷つけたり、腸のぜん動運動が高まりすぎて下痢を引き起こします。
- 冷えによる消化機能の低下
冷たい物を飲みすぎるなどして胃腸が冷やされると、胃腸の血行が悪くなり、消化機能が低下し、下痢になります。また、冷え症によっても同様のことが起こります。
- 細菌やウイルス感染
食中毒や赤痢、コレラ、風邪など細菌やウイルスの感染が急性の下痢の症状を起こすことがあります。これらの感染性急性下痢の症状は、発熱や腹痛、吐き気、嘔吐などをともなうのが特徴です。
- ストレスによる腸の痙攣
ストレスなどで緊張が高まると、腸の動きをコントロールしている自律神経が乱れて腸が痙攣するので動きがにぶくなり、下痢や便秘になったり、下痢と便秘を繰り返すことがあります。
下痢をともなう疾患
- 過敏性腸症候群
精神的ストレスや情緒不安定などが原因で、腸のぜん動運動に異常が起こり、腹痛をともなう慢性的な下痢を引き起こします。ときに下痢と便秘が交互に起こることもあります。何週間も下痢が続いたり、一時的に治まり、その後再発という現象を繰り返すこともあります。
- 潰瘍性大腸炎
何らかの原因で大腸の粘膜に慢性的な炎症を起こし、粘膜がただれたり、潰瘍が多発します。長期間下痢と腹痛が続き、粘液や血液の混じった便が出たり、発熱などの症状があらわれます。ストレスで症状が悪化し、比較的若い世代での発症が多くみられます。
- 大腸ポリープ
大腸の内側にできるイボ状に突き出た腫瘍で、多くは良性ポリープですが放置すると大腸がんに進行することもあります。血便や下痢、便秘といった症状がみられることがあります。早期のものは、自覚症状がありません。
- 食中毒や風邪
サルモネラ菌やO-157、ノロウイルスなどによる食中毒、ウイルス感染による風邪、コレラや赤痢などに急性の下痢の症状がみられます。これらの疾患は同時に腹痛、発熱、嘔吐をともなうことが多くみられます。
- 乳糖不耐症、アレルギー性胃腸炎
乳糖不耐症は、牛乳などに含まれる乳糖を分解する酵素が少なくて、牛乳などを飲んだときに下痢を起こす疾患です。また、アレルギー性胃腸炎は、アレルギー体質の人が胃腸にアレルギーを起こす原因となる食品を摂取すると、下痢や嘔吐、腹痛などの症状を起こします。
鍼灸治療
鍼灸: 泄止(気海兪外方3寸)、腎兪、天枢
泄止、および腎兪は下痢を止める作用があり、大腸兪は補法で下痢を止め、瀉法で便通をつけることが可能です。
さらに天枢は下痢にも便秘にも供用できます。灸も効果があり、併用も可能です。
臍の上の間接灸なども効果がありますが、長時間の施灸を要します。
小腸性下痢
吸収不良性下痢である慢性腸炎に見られます。腸内細菌の異常繁殖による腐敗、発酵によるもので、慢性腸炎の多くを占めています。
鍼灸: 脾兪、胃兪、中脘、気海、足三里
圧痛、硬結の強い経穴に施術を行います。
大腸性下痢
大腸過敏症による下痢が鍼灸によく適応します。
鍼灸: 大腸兪、水分、上巨虚
大腸兪は天枢と同様に便秘にも下痢にも用いられる経穴で、軽微な刺激を行います。
2018年6月29日
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