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不眠とは、睡眠と覚醒のリズムが破れ主観的な睡眠感を得られないことを言い、以下のような形態に分類できます。
① 就眠障害(入眠障害):床に入ってもなかなか眠ることができず、甚だしいときは一睡もできないことがある。神経質者、神経症者の不眠に代表される
② 熟睡障害(中間覚醒):眠りが浅く、夜中に何度も目が覚めるもの。脳器質障害、うつ病、統合失調症、また中間覚醒は老年性不眠症にも見られる
③ 早期覚醒:早朝に目覚めてしまい、その後眠れないもの。躁鬱病に多く見られるが、老年性不眠にもある
不眠症はその発生機序により以下の種類に分類されます。
① 一過性不眠症は、急性のストレス、ショックなどにより誘発されるもので、鍼灸治療に適する
② 持続性不眠症は慢性的な緊張、不安などによるもの。鍼灸治療により自律神経系を刺激することで改善する
③ 症候性不眠は各種の疾患に伴う睡眠障害で、特にうつ病などの精神疾患によるもの、内科的、あるいは外科的な痛みによるものが挙げられる。あるいは、発熱、掻痒感、咳、痰、呼吸困難、下痢、嘔吐なども不眠の原因になる。これらは原因疾患の治療が優先されないと治癒には至らない
不眠症(睡眠障害)の鍼灸治療
鍼灸治療は精神的な興奮や自律神経の乱れを鎮め、全身調節をおこない正常な身体のリズムを取り戻すようにします。不眠障害の初期の方や軽い症状の方は、鍼灸治療が極めて効果的です。
鍼は太陽、完骨に一定時間の置鍼、灸は完骨のツボを使います。また、補助的に背後兪穴で肺兪、心兪、腹部の中脘、前腕内側の内関を使います。灸は眠った気がしないという人に厥陰兪が有効です。
東洋医学では、不眠症(睡眠障害)は「失眠」または「不寝」といい、心・肝の機能の変調によって起きると考えています。心による不眠は寝つきが悪く、寝ても夢見が多く、肝による不眠は眠りが浅く、よく目を覚まします。原因としては,生まれたときからの体質が弱い、食事の不摂生や感情の乱れ、ストレス、慢性病による体力の低下などが考えられます。
イライラによる不眠症(肝)
このタイプは神経質で怒りっぽい。口が渇く、目が赤くなり、口が苦い、便秘などの特徴があります。
鍼灸治療のポイント:肝経のツボとして肝兪、期門、蠡溝、胆経の陽陵泉を使って治療を行います。
身体の抵抗力が低下した不眠症(肺)
上気道が弱く感冒に冒されやすく気管支が弱くて咳・痰が出やすい、皮膚の抵抗が弱く虫刺されやかぶれが起きやすい、下痢と便秘を反復するなどの傾向があります。
鍼灸治療のポイント:肺経の中府、太淵、脾経の三陰交に鍼とお灸の治療を行います。
体力低下による不眠症(腎)
病気の後や加齢によるものが多く、眠りが浅くなる、寝つきが悪くなるタイプです。
鍼灸治療のポイント:腎兪、関元、復溜など腎経に軽く刺激でお灸と鍼を行います。
生活習慣の改善
精神疾患など症候性の不眠症は別として、精神生理学的な要因による不眠症は生活習慣を改めることで改善します。以下にその要点を掲げておきます。
① 寝る前には、興奮する会話やTVでのスポーツ観戦などを避ける
② 夜は刺激物であるカフェイン(お茶やコーヒーなど)やニコチン(煙草)の摂取を止める
③ 寝る前は軽い音楽を聞いたり、精神が休まるような内容の書を読んでリラックスする
④ 規則正しい食事(寝る前の飲食をしない)と規則的な運動習慣
⑤ 眠くなってから床に就くこと。就寝時刻にこだわり過ぎない
⑥ 毎日同じ時刻に起床する(早寝早起きの生活習慣)、さらに朝に太陽の光をしっかりと浴びて体内時計のリズムを正しく動かす
⑦ 眠ろうとして過度の努力をせず目を閉じて静かに身を横たえておく
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ストレス関連障害は、ストレス体験をしてから症状が出るまでと症状の持続期間、ストレスの程度によって、急性ストレス障害、外傷後ストレス障害、適応障害の3つに大きく分けられます。急性ストレス障害(ASD)と心的外傷後ストレス障害(PTSD)は地震、洪水、火事のような災害、または事故、テロ、戦争といった人災、あるいは、監禁、強姦など犯罪の被害、強い恐怖感を伴った体験や生命の危険にさらされた体験、あるいは、いじめ、体罰、虐待、DV、パワハラ、モラハラ、セクハラなど人としての尊厳が損なわれるような非常に強いトラウマ(心的外傷)が原因となりますが、外傷的な出来事は必ずしも直接的な体験だけとは限りません。テレビやインターネットなどで悲惨な場面を観たり、人によっては話を聞いただけで急性ストレス障害の状態になってしまう事もあります。
急性ストレス障害、あるいは外傷後ストレス障害は、ストレス体験直後から3ヵ月以内に発症します。症状が、強い恐怖、無力感または戦慄を伴う出来事の後、1ヵ月以上持続している場合には心的外傷後ストレス障害、持続期間が1ヵ月未満の場合には急性ストレス障害と診断されます。なお、心的外傷には事故・災害時の急性トラウマと、児童虐待など繰り返し加害される慢性の心理的外傷があります。ASDやPTSDと判断されるのは、以下の3つの基本症状です。
- 過覚醒: 精神的不安定による不安、不眠など
- 回避: トラウマの原因になった障害、関連する事物に対して避ける傾向
- 再体験: 事故・事件・犯罪の目撃体験等の一部や、全体に関わるフラッシュバック
ASDやPTSDの症状は多種多様で、上記以外にも以下のような自律神経失調症状が現れます。
○ 精神症状
イライラする、落ち込みやすい、感情の麻痺、集中力の低下、意欲の低下、記憶力の低下、注意力がない、不安感が強い、ちょっとした事ですぐあせるなど
○ 全身症状
疲れやすい、疲れが取れない、めまい、立ちくらみ、微熱、不眠、食欲不振、ほてり、冷え、冷や汗など
○ 呼吸器系
息苦しい感じ、息ができない、酸欠感、息切れしやすいなど
○ 循環器系
動悸、胸部圧迫感、めまい、立ちくらみ、のぼせ、冷え、血圧の上昇・低下など
○ 消化器系
胃もたれ、腹部膨満感、腹鳴、胃の不快感、吐き気、食欲不振、便秘、下痢、ガスがたまるなど
○ 泌尿器系
頻尿、尿が出にくい、残尿感など
○ 生殖器系
インポテンツ、早漏、射精不能、生理不順、外陰部のかゆみなど
○ その他
頭痛、頭重感、首・肩のこり、目のピントが合いにくい、涙目、まぶしさ、耳鳴り、耳の閉塞感、口が渇く、のどの異物感、のどの苦しさ、手足の冷え、手足のほてり、顔のほてり、手足の発汗、手のふるえなど
一方、適応障害は、ストレス要因により日常生活や社会生活、職業・学業的機能において著しい障害がおき、一般的な社会生活ができなくなるストレス障害で、災害や人災の他に個人的問題、家族関係や職場のトラブルなどもストレス要因になります。不安、抑うつ、焦燥、過敏、混乱などの情緒的な症状のほか、不眠、食欲不振、全身倦怠感、易疲労感、ストレス性胃炎、頭痛、吐き気、発熱、体のふるえ、精神運動抑制など、ストレス反応としての身体的症状が自覚症状としてあらわれます。軽度のうつ病と区別がつきにくく、放置しているとうつ病になり、悪化する場合があるので注意が必要です。性格が真面目で責任感があり、忍耐強い人ほどかかりやすいと言われています。また、適応障害がもとで発生する身体的な異常は、自律神経失調症や心身症ともよばれます。
3種類のストレス障害(まとめ)
極度の緊張状態で交感神経優位が続くと、全身の血液循環等に障害が生じ、身体の各部に痛みを感じやすくなります。また、姿勢も崩れてくるため、身体各部位のバランスが乱れ、頸部や腰部の筋肉等が疲れやすくなります。鍼灸以外の一般的なストレス障害の治療法としては、抗不安薬、睡眠導入剤、抗うつ薬、抗精神病薬など薬物による治療やカウンセリング治療ですが、身体的な症状を和らげるためには、ストレス要因を排除するだけでなく、ストレス要因や「自分自身」を客観視し、認知評価を変えていくような方法が大切です(認知行動療法)。さらには、リラクセーション、自律訓練法(自己暗示をして心身をリラックスさせる方法)などによる治療法があります。適度な運動などによって情緒的、身体的興奮を鎮めることも効果があります。
鍼灸治療法
ストレス障害を持つ方の多くが身体の痛みを伴っています。筋痛、関節痛などですが、原因は過度の精神的緊張による自律神経のアンバランスにあります。このとき、鍼灸によって身体症状を直していく過程で、精神的症状も軽くなっていきます。まさに「心身一如」そのものを表しています。
鍼によるストレス障害の直接的な治療法としては、「自律神経失調症」の「神経系愁訴」を参照いただければ良いかと思いますが、それ以外にも精神的安定を図る経穴として、以下のようなものが効果的です。
内関・神門・労宮・湧泉・太衝・太谿・三陰交・豊隆・足三里・百会・四紳聡・神庭・印堂・大椎・心兪・肝兪・・脾兪・胃兪・腎兪・志室・膻中・期門・中脘
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頚椎症は、頸椎(首の骨)の変形や椎間板の変性によって引き起こされる病気で、主に加齢によって起こるとされています。頚椎症は変形性脊椎症や頸椎椎間板ヘルニアなどのような神経根症が主ですが、脊柱管内の圧迫により症状が出る脊髄症も含まれます。いわゆる頸肩腕症候群全体の約50%を椎間板ヘルニアなどの頚椎椎間板症が占めると言われています。頚椎椎間板症の中で最も多いのがC5~6間で、全体の約50%、C6~7間で約40%、C4~5間は約10%、C3~4間は極めて少ないとされています。多くが片側で、しかも右側が多く、年齢的には40歳代、50歳代に見られます。しびれは橈骨神経・正中神経に多く、尺骨神経はまれです。いずれも手腹に多いのが特徴です。知覚鈍麻はC4~5間では上腕、前腕の外側、C5~6間では橈骨神経の支配する母指と示指の間(合谷の辺り)、C6~7間では正中神経の支配する中指に現れます。咳やくしゃみの時に放散痛があると脊髄圧迫症状があると考えられるので注意が必要です。
なお、広義の頸肩腕症候群は、「頚椎症」ばかりでなく「肩こり」・「背中のはり」・「胸郭出口症候群」なども含み、首(頸部)から肩・腕・背部などにかけての痛み・しびれ感などを訴える全ての症例を言います。原因のはっきりしない頸肩腕症候群は整形外科の病気であるのにも関わらず、心療内科へ紹介されるケースも多いようです。これは病気の認知度の低さに加え、 MRIやレントゲン検査では発見出来ず、検査所見が少なく診断や立証が困難ということにあります。近年では、数年以上の療養を余儀なくされる重症罹患者の存在もあり、中枢神経系を介して症状が全身に広がり、 慢性疲労や疼痛、筋力低下が引き起こさせるのではないかと考えられています。 すなわち、過度の脳疲労の蓄積によって生じる病気とも言えます。
頸肩腕症候群の鍼灸治療
頚椎症ばかりでなく、頸肩腕症候群として共通の鍼灸治療があります。まず、指圧、あん摩、マッサージにより、頸部の軟部組織の過緊張と収縮を除き、頸部の循環動態の改善を図ります。その後、後頭部髪際の天柱・風池への刺鍼を行い、喉頭隆起とC6棘突起の中点にある扶突に対し、やや後方に向けて斜刺します(傍神経刺)。さらに、肩井と膏肓に対し下内方に刺鍼を施した後に施灸をします。
橈骨神経障害の鍼灸治療
神経根症状により上腕から前腕にかけて神経走行上の圧痛点が現れることがあります。橈骨神経障害の場合には、臑会、消濼、曲池、四瀆などに圧痛が現れ、しびれ感を母指・示指背面から手背橈骨側に訴えます。すなわち、東洋医学的には大腸経、三焦経の病変と捉えられます。臑会、曲池、四瀆(圧痛が見られたときのみ)に刺鍼後、著明な圧痛点に施灸をします。その他補助穴として臂臑、消濼があります。
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胃に関わる症状としては、胃が重く感じたり、胃が膨れて張った感じが主であり、ときに胃が痛んだり、また食欲不振、食味不良、悪心(吐き気)、胸焼け、曖気(げっぷ)、呑酸(酸っぱいものが上がってくる)などの症状も加わります。しかし、これら全ての症状は、胃疾患だけに見られるものではなく、消化器全般(腸炎、慢性便秘、肝炎、胆石症、胆嚢炎、膵炎ほか、これら臓器の癌)はもとより、急性・慢性の熱性病、呼吸循環器・泌尿器系疾患でも現れます。特に悪性腫瘍や急性腹症に進む恐れのある疾患などは鍼灸不適用であり、病院にかかるべき症状です。
急性単純胃炎: 食事の不摂生で起こるものが最も多く、食欲不振、食味不良、胃部重圧感、胃部疼痛があり、さらに口渇、胸焼け、悪心、嘔吐などもあります。嘔吐物に血液や胆汁が混じることもあり、ときに頭痛、眩暈、倦怠感などの症状が現れることもあります。予後は良好です。
慢性胃炎: 急性胃炎から移行するもの、食習慣や煙草、薬物などが原因となるもの、貧血・糖尿病・胃潰瘍・胃癌などから二次的に生じるものがあります。主に心窩部の重圧感、膨満感、鈍痛などの症状があります。
胃神経症: 自律神経の異常が胃症状として表れるものと考えられています。食事とは無関係に腹痛を訴え、胸焼け、悪心を訴えますが嘔吐にまでは至りません。鍼灸が最も適する症例となります。
胃アトニー症: 胃筋無力症とも言い、通常、胃下垂と胃の運動低下が見られます。胃もたれや腹部膨満感があります。東洋医学では脾気下陥の証とみなしますが、これは脾気が内臓を上に持ち上げ吸収した栄養物を上に運ぶ作用があるためで、鍼灸では脾気を補う治療を行います。
鍼灸治療
脾経、胃経を中心に治療を行いますが、重要な経穴として脾兪、胃兪、中脘、足三里に軽い刺激の鍼、脾兪、中脘、足三里に灸を行います。
胃の重圧感、膨満感を訴え、触診にて胃部に硬結が認められる場合は胃倉、梁門、三陰交などに反応が出るので軽い鍼治療を行います。
胃部の鈍痛、呑酸、胸焼けなどが主症状の場合は、肝経と胆経の治療が効果的で、肝兪、膈兪、陽陵泉などを治療します。
食欲不振、食味不良が主症状の場合は、胃経と三焦経を治療します。すなわち、三焦兪、梁門、下脘、三陰交に鍼灸を施します。
倦怠感がある場合は、治療対象として腎経の腎兪、復溜、悪心がある場合は心包経の内関をそれぞれ選びます。
療養指示
胃疾患で重要なのは療養であり、食事の摂取時間、摂取量を適切にし、栄養のバランスがとれた食事を心がけ、偏食や暴飲暴食は慎まねばなりません。消化の悪い脂肪類、繊維類は減量し、アルコールや刺激物は禁止とします。胃症状のある場合には入浴や適当な運動も必要で、その人の体力に応じて運動のレベルを変えて行う必要があります。
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円形脱毛症の原因
円形脱毛症の原因については、様々な説が提唱されていますが、近年では、「自己免疫疾患」という免疫機能の異常を原因とする説が有力です。さらに誘因として、疲労や感染症などの肉体的・精神的なストレスや、遺伝的・体質的な素因が加わります。
自己免疫疾患
「自己免疫疾患」とは、外部からの侵入物を攻撃することで私たちの体を守ってくれている免疫系機能に異常が生じ、自分の体の一部分を異物とみなして攻撃してしまう病気です。円形脱毛症は、炎症反応を鎮めるために働くTリンパ球が、毛根を異物と間違えて激しく攻撃してしまうために発症すると考えられています。しかし、なぜその様な異常が生じてしまうのかは、まだ明らかになっていません。また、円形脱毛症は、橋本病に代表される甲状腺疾患、尋常性白斑、SLE、関節リウマチ、あるいは重症筋無力症などの各種自己免疫疾患に併発する場合があります。
アトピー素因
アトピー素因とは、アトピー性疾患(アトピー性皮膚炎、気管支炎、アレルギー性鼻炎のいずれか)を持っていることを言います。アトピーの原因として、体質的なものと環境的なものが影響していると考えられており、円形脱毛症はアレルギー疾患を持つ人の方が、持たない人より多く発症していると言われています。アトピーも円形脱毛症も、「自己免疫疾患」と言う免疫異常が原因の一つとされています。精神的ストレスによる影響
円形脱毛症の発症要因のひとつとして、「精神的ストレス」が挙げられます。精神的ストレスを受けると、ストレスに抵抗するために交感神経が活発に動きます。交感神経は、心肺を活発化し体温を上げます。このとき、ストレスが強すぎたり長く続いたりすると、交感神経に異常をきたし、その結果、血管を収縮させ、頭部への血流が悪くなり、毛根への栄養補給が行き届かなくなって脱毛が引き起こされると考えられます。また、ストレスは、毛根への栄養補給を妨げるだけでなく、「自己免疫疾患」や「内分泌異常」などのさまざまな疾患を誘因すると考えられています。
出産後の女性ホルモン値の変化
妊娠から出産後における女性ホルモンの減少も、原因の一つと言われています。妊娠中、体内の女性ホルモン値は通常の100倍以上に増加していますが、出産により一気に通常値に戻ります。女性ホルモンが減少すると抜け毛につながることから、毛周期との関係で産後3~4ヵ月後に抜け毛が多くなります。多くの場合は、頭髪全体のボリュームが減る産後脱毛となりますが、このときに、円形脱毛症になることがあります。さらにアトピー素因を持つ場合、それが加速されやすいと言われています。ホルモンバランスだけでなく、育児の忙しさによる食事の偏りや出産のストレスが加わることもあります。
円形脱毛症の鍼灸治療
鍼: 脱毛部周辺に、細鍼にて1cm間隔で弾入程度の散鍼を行います。また、脱毛部全面に皮膚鍼、または梅花鍼で皮膚刺激を30秒から1分程度行います。
灸: 脱毛部が1cm以内のときはその中央に半米粒大の艾で3~5壮、施灸します。脱毛部が2cmか、それを越えるときは脱毛部境界部に1cm間隔で単刺し、さらにその境界部に3~4箇所にわたり施灸を行います。また、脱毛部以外では、天柱または風池、身柱、肺兪、至陽、膈兪に単刺、天柱、大椎、身柱に半米粒大の施灸を3~5壮行います。
その他
皮膚疾患は大腸経が関係するので、円形脱毛症においても大腸経の治療を重視して実施すると効果的です。すなわち、曲池、合谷、内関に単刺、曲池に灸5壮を施灸します。なお、内関は大腸経ではありませんが、精神的ストレスが疑われるときは重要です。 -
血液中の尿酸濃度が何らかの理由により標準値から著しく上昇すると、体温が低い足部などにおいて尿酸が血液中に溶解しきれずに、尿酸塩として結晶化して関節包内などに付着することが知られています。この状況に対して、白血球群のうち特に好中球が、尿酸結晶を異物と判断して攻撃を行うと言われています。このような好中球による尿酸結晶捕食活動が激化すると、その活動による過大なエネルギーや尿酸を抱え込んで死んだ好中球の残骸による影響などから、血管壁がダメージを受けて大きな炎症が発生します。同時に、当該部位周囲の神経組織をも刺激し、患者は「内側からの激痛」を感じることとなります。
血中尿酸値の上昇とともに、逆に血中尿酸値の急降下も痛風発作の要因であることは広く知られています。そのため、痛風発作時における尿酸生成阻害剤や尿酸排出促進剤などの服用は、基本的に禁忌とされています。
恒常的な高尿酸血症患者がすべて痛風発作を起こすわけではなく、そのメカニズムは完全には解明しきれていません。しかしながら、よく知られている発作のきっかけとしては、脱水症状に伴う急激な尿酸値の変動、物理的衝撃による結晶の剥落、不適切なタイミングでの尿酸コントロール薬の投与、激しすぎるスポーツなどが考えられています。
高尿酸血症の患者でも痛風を起こさないケースは少なくありませんが、高尿酸血症が、腎障害(痛風腎)、尿路結石、虚血性心疾患など別の病気のリスク要因であることは忘れるべきではありません。
痛風の症状としては、かなり急激に関節に激烈な痛みが起こり、発赤や発熱を伴います。尿酸の結晶は、冷えと高い比重のために重力に引かれて足部に沈着しやすく、痛風発作は足趾(特に母趾MP関節)に好発します。初発症状は足部であることが多いのですが、足関節、膝関節から発症することもあります。発作を繰り返すたびに症状は増悪します。発作の痛みは骨折の痛み以上といわれ、非常な苦痛を伴います。また、耳介などに痛風結節と呼ばれる皮下結節を作ることがあり、これが診断の助けとなります。X線では骨髄腫のように”punched out”と呼ばれる骨破壊像が見えます。痛風と鑑別を要する関節炎の疾患としては、関節リウマチ、変形性関節症、偽痛風があります。
患者の90%以上が男性です。最近の疫学的研究によると、肝臓で尿酸が作られるのを促進し尿酸濃度をあげてしまうという理由から、アルコールは痛風のリスクを高めます。尿酸とは、プリン体と呼ばれる物質の代謝産物であり、プリン体を多く摂取すると高尿酸血症、さらには痛風の引きがねとなると考えられます。肉のみならず魚に含まれるプリン体も痛風のリスクを高めますが、野菜に含まれるプリン体(麦芽、豆類に多い)は高めることはありません。また、果糖は急速に代謝されてアシドーシスを引き起こし、この状態で尿酸が析出しやすくなります。近年、高尿酸血症に関わる遺伝子が日本を含む各国で発見されています。
そのほか、精神的ストレスや水分摂取の不足も発症の引きがねとなります。特に水分摂取の不足に関しては、日常的に意識して水分を多めに取り、排尿によって尿酸を体外に出す事で血中尿酸濃度を低く保つことが勧められます。
痛風の鍼灸治療
腎機能の改善を目標に、尿酸の排出を高める目的で以下のような経穴に対し治療を行います。
鍼:腎兪、志室、足三里、陰谷
灸:腎兪、太谿発作部位が第1中足指節関節であった場合には、大都、太白、行間に細鍼で浅刺します。
疼痛の軽減には、腫脹部位に軽い触接鍼を行います。刺絡:阿是穴、太衝、内庭
針を刺して数滴の血液を絞り出します。できたらカップを被せて陰圧抜缶療法を行うとより効果的です。