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血液中の尿酸濃度が何らかの理由により標準値から著しく上昇すると、体温が低い足部などにおいて尿酸が血液中に溶解しきれずに、尿酸塩として結晶化して関節包内などに付着することが知られています。この状況に対して、白血球群のうち特に好中球が、尿酸結晶を異物と判断して攻撃を行うと言われています。このような好中球による尿酸結晶捕食活動が激化すると、その活動による過大なエネルギーや尿酸を抱え込んで死んだ好中球の残骸による影響などから、血管壁がダメージを受けて大きな炎症が発生します。同時に、当該部位周囲の神経組織をも刺激し、患者は「内側からの激痛」を感じることとなります。
血中尿酸値の上昇とともに、逆に血中尿酸値の急降下も痛風発作の要因であることは広く知られています。そのため、痛風発作時における尿酸生成阻害剤や尿酸排出促進剤などの服用は、基本的に禁忌とされています。
恒常的な高尿酸血症患者がすべて痛風発作を起こすわけではなく、そのメカニズムは完全には解明しきれていません。しかしながら、よく知られている発作のきっかけとしては、脱水症状に伴う急激な尿酸値の変動、物理的衝撃による結晶の剥落、不適切なタイミングでの尿酸コントロール薬の投与、激しすぎるスポーツなどが考えられています。
高尿酸血症の患者でも痛風を起こさないケースは少なくありませんが、高尿酸血症が、腎障害(痛風腎)、尿路結石、虚血性心疾患など別の病気のリスク要因であることは忘れるべきではありません。
痛風の症状としては、かなり急激に関節に激烈な痛みが起こり、発赤や発熱を伴います。尿酸の結晶は、冷えと高い比重のために重力に引かれて足部に沈着しやすく、痛風発作は足趾(特に母趾MP関節)に好発します。初発症状は足部であることが多いのですが、足関節、膝関節から発症することもあります。発作を繰り返すたびに症状は増悪します。発作の痛みは骨折の痛み以上といわれ、非常な苦痛を伴います。また、耳介などに痛風結節と呼ばれる皮下結節を作ることがあり、これが診断の助けとなります。X線では骨髄腫のように”punched out”と呼ばれる骨破壊像が見えます。痛風と鑑別を要する関節炎の疾患としては、関節リウマチ、変形性関節症、偽痛風があります。
患者の90%以上が男性です。最近の疫学的研究によると、肝臓で尿酸が作られるのを促進し尿酸濃度をあげてしまうという理由から、アルコールは痛風のリスクを高めます。尿酸とは、プリン体と呼ばれる物質の代謝産物であり、プリン体を多く摂取すると高尿酸血症、さらには痛風の引きがねとなると考えられます。肉のみならず魚に含まれるプリン体も痛風のリスクを高めますが、野菜に含まれるプリン体(麦芽、豆類に多い)は高めることはありません。また、果糖は急速に代謝されてアシドーシスを引き起こし、この状態で尿酸が析出しやすくなります。近年、高尿酸血症に関わる遺伝子が日本を含む各国で発見されています。
そのほか、精神的ストレスや水分摂取の不足も発症の引きがねとなります。特に水分摂取の不足に関しては、日常的に意識して水分を多めに取り、排尿によって尿酸を体外に出す事で血中尿酸濃度を低く保つことが勧められます。
痛風の鍼灸治療
腎機能の改善を目標に、尿酸の排出を高める目的で以下のような経穴に対し治療を行います。
鍼:腎兪、志室、足三里、陰谷
灸:腎兪、太谿発作部位が第1中足指節関節であった場合には、大都、太白、行間に細鍼で浅刺します。
疼痛の軽減には、腫脹部位に軽い触接鍼を行います。刺絡:阿是穴、太衝、内庭
針を刺して数滴の血液を絞り出します。できたらカップを被せて陰圧抜缶療法を行うとより効果的です。 -
糖尿病とは、ホルモンの一種であるインスリンの作用が不足することによって、慢性的に血液中の糖の濃度(血糖値)が上昇する病気です。インスリンは膵臓のランゲルハンス島β細胞で作られますが、インスリン作用が不足する主な原因は、
(1)膵臓からのインスリン分泌の低下
(2)分泌は正常だが、肝臓や筋肉でのインスリンの働きが悪くなるインスリン抵抗性の存在
が挙げられます。糖尿病は、初期の頃は自覚症状がほとんどないため、健康診断などを定期的に受け、血糖値の上昇を早期に発見することが必要です。自覚症状として口渇、多飲、多尿、体重減少などが現れてきたときには、既に糖尿病は進行しており、多くの場合、中等度以上の高血糖が長期間続いている状態です。2012年の国民健康・栄養調査によると、糖尿病有病者と予備群は「糖尿病が強く疑われる人」の950万人と「糖尿病の可能性を否定できない人」の1,100万人を合わせると、全国に2,050万人いると推定されています。しかも、糖尿病が疑われる人の3~4割はほとんど治療を受けたことがないと言われています。糖尿病の種類
1型糖尿病
膵臓のβ細胞というインスリンを作る細胞が破壊され、からだの中のインスリンの量が絶対的に足りなくなって起こります。急性発症型の若年性糖尿病です。
2型糖尿病
インスリンの出る量が少なくなって起こるものと、肝臓や筋肉などの細胞でインスリン作用の感受性が低下するために、ブドウ糖がうまく取り入れられなくなって起こるものがあります。中年以降に食事や運動などの生活習慣が関係している場合が多く、わが国の糖尿病の95%以上はこのタイプです。
遺伝子の異常やほかの病気が原因となるもの
遺伝子の異常や肝臓や膵臓の病気、感染症、免疫の異常などのほかの病気が原因となって、糖尿病が引き起こされるものです。薬剤が原因となる場合もあります。妊娠糖尿病妊娠をきっかけにインスリンの働きが落ち、インスリン分泌量が十分に増えずに血糖値が高くなる状態で、新生児に合併症が出ることもあります。東洋医学的には糖尿病に該当する病を「消渇」と呼び、主症状として多飲、多食、多尿、身体の消痩または尿濁、尿が甘いなどが特徴です。病の原因としては、飲食不節、情志失調、房事過多などであり、臓腑は肺、脾、腎が要となります。それぞれ、上焦は肺燥、中焦は胃熱、下焦は腎虚となります。これらの陰虚燥熱の証に対して治療を行います。なお、合併症として白内障、夜盲症、瘡癤、癰疽(どちらも化膿性のできもの)、水腫、中風、半身不随などがあります。
糖尿病の鍼灸治療
糖尿病の鍼灸治療目標は、長期にわたる代謝異常の是正と合併症の予防ですが、食事療法、運動療法、経口薬、インスリン注射などを併用して、総合的に血糖値のコントロールと合併症予防を図る必要があります。
糖尿病の共通鍼灸治療
鍼灸治療の処置としては、脾経と胃経を調整するのが主要な目標です。
中脘、梁門、左関門、左腹哀、肝兪、脾兪、左三焦兪、曲池、足三里が鍼灸の主穴で、鍼・灸単独より併用が効果的です。高血糖の補助穴
左魂門、左意舎、天枢、三陰交への鍼治療(単刺、置鍼)口内乾燥
廉泉、内関への鍼(単刺)全身倦怠感
腎兪、ときに大腸兪への鍼灸併用治療眼症状(糖尿病性白内障、網膜症)
太陽、風池への鍼治療(単刺)高血圧
洞刺、兪刺間欠性跛行症
陰包、下陰包、地機、承筋への鍼治療(単刺)性腺障害
関元兪、次膠への鍼治療(深刺し置鍼)と灸掻痒
曲池、築賓、曲骨(女性陰部掻痒)への鍼治療(単刺) -
喘息とは
一般的な喘息の正式名称は、「気管支喘息」です。白血球の一種である好酸球やリンパ球を中心とした細胞が気管支に集まり、そこが常に炎症を起こして狭くなったり、塞がってしまうことで起こります。炎症が継続しているため、ちょっとした刺激で気管支を取り囲む筋肉が収縮し、空気の通り道が狭くなる「気道閉塞」が起こりやすい状態が続いています。喘息の発作は夜間、特に明け方に起きやすく、また、春や秋など季節の変わり目に起きやすい特徴があります。
喘息の症状として以下のような特徴があります。
・のどが「ゼーゼー、ヒューヒュー」いう喘鳴
・呼吸困難(特に息を吐くときが苦しい)
・発作性の激しい咳、粘り気のある水っぽい痰
・胸が苦しい、胸が痛い、
・安静時でも起こる(体を動かしたときだけでなく、じっとしていても突然発作が起こる)
・発作は反復する(発作がないときは健康な人と同じ生活ができるが、発作は必ず繰り返す)喘息の原因としては、住環境の変化によってハウスダストやダニ、住宅建材に使われる化学物質などのアレルゲンの増加が指摘されていますが、一方で、大気汚染や運動、たばこ、香水などの匂い、風邪などの感染症の他、過労・ストレス、天候・気温の変化など、アレルギー以外の原因もあります。特に子どもの喘息では9割がアレルギーが原因であるのに対し、大人の場合は6割ほどであり、大人の喘息の4割は、アレルギーとは無関係で起こります。最近の日本では、子どもの5~7%、大人の3~5%がかかっているといわれています。
喘息の鍼灸治療
治療内容は咳嗽の場合と似ていますが、喘息はアレルゲンに対する免疫力を高めることを目標とします。
鍼: 肺兪、膈兪、人迎(洞刺)、中府、尺沢
灸: 肺兪、身柱、膈兪
補助的に心兪、神蔵への鍼、至陽への灸喘息発作の治療
鍼:天柱、肩井、膏肓、扶突、膻中咳の多発
鍼:彧中肺気腫の合併
鍼:期門、不容 -
咳について
咳(咳嗽・がいそう)は、外から入ってきたほこり、煙、風邪のウイルスなどの異物を気道から取り除こうとする生体防御反応です。そのことで肺や気管などの呼吸器を守ります。
咽頭や気管、気管支など気道の粘膜表面に異物が入り込むと、咳受容体というセンサーが感じ取り、脳にある咳中枢に刺激が伝わると、横隔膜や肋間膜などの呼吸筋に指令が送られ、「咳反射」という反射的な収縮運動が起こります。しかし、反射とは言え、意志によりある程度の制御も可能です。
咳嗽を引き起こす疾患の鍼灸適応症としては、慢性気管支炎を初め、軽度な急性気管支炎、気管支拡張症などがあります。
咳には、気道にたまった痰を外に排出する役割もあります。気道粘膜には細かい毛(繊毛)と、その表面を覆う粘液があり、粘膜の表面を潤して保護しています。この粘液がウイルスや細菌などの病原体やほこりなどの異物をからめ取ったものが「痰」です。気道に炎症があると痰が増え、粘り気が強くなります。痰は、外にむかって異物を追い出そうとする繊毛の運動と、咳反射によって外に出されます。痰を伴わない乾いたせきのことを乾性咳嗽(空咳)と言い、痰や喀血を伴う湿ったものを湿性咳嗽と呼びます。
なお、咳嗽が続くとエネルギーを著しく消耗するので、風邪などで咳嗽が続く場合は栄養状態に注意する必要があります。せきを鎮める鎮咳薬は基本的に咳中枢に作用しますが、必要な咳嗽をも止めるリスクがあります。学会ガイドラインでは、明らかな上気道炎などにとどめ、中枢性鎮咳薬の使用はできる限り控えることとされています。その他、気管支を広げ呼吸を楽にする気管支拡張剤(アドレナリンβ2受容体刺激)、痰の除去を促進する去痰薬や小青竜湯、麦門冬湯などの漢方薬もよく使われます。
咳(気管支炎)の鍼灸治療
鍼: 肺兪、心兪、天突、中府、神蔵、尺沢
灸: 肺兪、天突、中府、腎兪(背部、胸部への温灸も効果的) -
風邪とは、主としてウイルスの感染により上気道(鼻腔や咽頭等)が炎症を起こした状態のことを言い、局部症状として咳嗽(せき)、咽頭痛、鼻汁、鼻づまりなど、全身症状として発熱、倦怠感、頭痛などが出現します。
風邪ウイルスの数は200種類以上と言われていますが、病原体の代表格として鼻風邪を起こすライノウイルスや、喉を腫らすアデノウイルスがよく知られています。感染経路としては、風邪ウイルスを持っている人のくしゃみやせきで、鼻水や唾液を直接浴びるだけではなく、何かの媒体を介して間接的に自分の鼻や口の粘膜に取り込んでしまうことが挙げられます。
インフルエンザも、風邪と同じく上気道の感染によって起こる病気ですが、風邪にくらべて熱が高く、関節痛や筋肉痛などの全身症状を伴います。さらに、インフルエンザ脳症や肺炎など、重い合併症を起こしやすく、はるかに強い感染力を持っていることが異なる点です。インフルエンザウイルスは普通の風邪ウイルスと違い、空気中にただよって長時間生存することができるので、ウイルスがいる空気を吸い込むだけでも感染してしまいます。そのため感染者の周辺にいるだけで、感染の可能性が高くなってしまうのです。寒さと乾燥に強く、暑さと湿気に弱いインフルエンザウイルスにとって、冬は最も活発になる季節です。インフルエンザが冬に流行るのはそのためです。
なお、風邪やインフルエンザにかかると、抗生物質を出す病院がありますが、ほとんどの場合は効果がありません。抗生物質はウイルスに効かないからです。肺炎などの二次感染による合併症を予防する効果があるとの理由によるようですが、抗生物質には下痢・嘔吐などの副作用もあり、さらに耐性菌が増えるリスクもありますので、使用は慎重にしなくてはなりません。
体がウイルスと戦っていると、粘膜内部の組織に炎症が起こり、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりなどの症状を引き起こします。発熱によりウイルスを殺し、咳やくしゃみ、鼻水などは体からウイルスを出す働きがあります。すなわち、発熱は自分で自分の体を治そうとする免疫の働きが活発になっているサインです。
発熱は、人間が本来持っている自然治癒力を活性化させるものですので、無理に下げると免疫力が落ちて、病が治りにくくなります。市販の風邪薬は、風邪の諸症状を起こす神経などを眠らせて症状が出ないようにしているだけですし、解熱剤の乱用は本当に免疫力を下げますので止めた方がよいでしょう。
「風邪」の語源ですが、中医学では「ふうじゃ」と読み、「風(ふう)」という「邪気」が外から防御線を突破して体の中に入った状態を言います。身体を防衛している「気」が弱ると、このような外邪に簡単に侵入されてしまいます。風邪は他の邪気、例えば「湿」が結びついて侵入すると節々が痛くなり、「風」と「寒」が結びついて侵入するとゾクゾクとした悪寒を伴います。
風邪症状の共通鍼灸治療
後頭部の風府、天柱、上背部の風門、肺兪、手背部の合谷に鍼、風門と身柱に多壮灸を行います。これらは、風邪の予防としても効果があります。
咳: 咳による胸郭の激しい動きは呼吸筋のエネルギー消費が増加させてしまうので、体力を消耗してしまいます。夜間に起これば睡眠が阻害され、疲労が増します。そのような場合には肺兪、心兪、天突、中府、神蔵、尺沢に鍼、肺兪、天突、中府、(腎兪)に灸をしますが、背部、胸部に間接灸を行うのも効果的です。
鼻水: 印堂、迎香に単刺術で軽い刺激を行いいます。
鼻閉塞: 風府、天柱に旋撚術、または回旋術の手技で鼻の通りが良くなります。
咽喉痛: 天容、廉泉、顎下部の圧痛点へ散鍼、皮膚鍼を行います。
頭痛: 発熱の症状として現れるほかに、副鼻腔炎を併発したときに著明となります。痛みの部位に応じて、治療点を選んで鍼を行います。前頭痛に対し攅竹、上星に旋撚術を、後頭痛と全頭部痛に対し天柱に雀啄または旋撚術を、また強間に回旋術を行います。側頭痛には風池、太陽に旋撚術または雀啄を行います。
食欲不振: 熱が出ると食欲が低下してしまいますが、免疫力を高めて早期の治癒に向かうには消化の良いものを食べて体力を補うことが大切です。このようなとき、鳩尾、中脘、足三里に鍼を行いますが、下痢症状が出ている場合には天枢、下志室(L3~4)に軽い鍼刺激を加えます。
風邪の予防
① マスクの着用:
マスクの網の目はウイルスに比べるとはるかに大きいので、実際的にマスクでウイルスの出入りを止めることはできません。しかし、マスクをすることで口の中の潤いを保つことが可能です。結果として鼻や喉の乾燥を防ぎ、ウイルスが嫌う高湿高温の環境にすることができます。また、風邪をひいた後も炎症が進むのを抑え、症状を緩和することができます。② 手洗いとうがい:
空気中に飛散したウイルスを吸い込むだけでなく、電車のつり革や室内の家具などに付着したものを触った手を介して感染することが多いため、手洗いが大切です。③ 温度・湿度のコントロール:
室内の暖房器具によって空気が乾燥すると、鼻やのどの粘膜が乾燥して体の防御機能が低下し、ウイルスに感染しやすくなります。室内の湿度は加湿器などで適度に保って、ウイルスに感染しにくい環境を整えます。④ 免疫力の維持:
偏食を避け、バランスよく栄養をとることが重要です。体の免疫システムに欠かせないビタミンC、体のエネルギー産生と免疫の主役である抗体に必要なビタミンB群を多くとることがポイントです。また、充分な睡眠とウォーキングや水泳、ヨガなどの適度な運動で体力をつけ、免疫力を高めることも大切です。虚弱な人の免疫力の向上には、日頃から足三里に灸をするとよいと言われています。⑤ 身体を冷やさない:
東洋医学では、風邪は「風門」から、また寒邪は「大椎」から入って来ると言われています。すなわち、「冷えから首を守る」ことが大事です。外出時のマフラーや就寝時のタオル使用で首をしっかりガードします。また、ドライヤーなどで大椎を温めるのも効果的です。 -
小児は心身ともに未熟で、感受性が強く環境に左右されやすいので、授乳制限、強制断乳、排便排尿の無理なしつけ、あるいは家庭不和などが原因となって小児神経症が生じます。すなわち、精神的・身体的症状として現れる泣きやすい、驚きやすい、怒りやすい、指しゃぶり、偏食などです。
これらは小児神経症の一部症状であり、小児神経過敏、あるいは、小児の自律神経失調からくる神経異常興奮が原因と考えられています。この症状は、昔から「疳虫(かんむし)」とも呼ばれて来ました。疳虫の疳は東洋医学では五疳を指し、臓に応じて肝疳・心疳・脾疳・肺疳・腎疳に区別されます。わかりやすく言えば、子どもの体質によって例えば肝体質であれば、夜泣き、かんむし、噛みつきなどの神経症が出やすく、脾体質ですと、食欲低下、下痢、アトピーなどが主症状になります。その他、肺体質は風邪、扁桃腺、腎体質の場合はおねしょ、怖がりなどとなります。
小児鍼
小児鍼は大阪地方で主に発達してきました。今でも関西を中心に盛んに行われています。小児鍼は夜泣き、かんむしなどの愁訴に有効な治療法であり、主訴のほかにも「風邪をひきにくくなった、丈夫になった、元気になった、食欲が出た、よく眠るようになった」など、身体全体に良い変化がみられます。
小児鍼の対象となるのは主として5歳くらいまでの乳幼児であり、それ以上は軽度の一般的鍼灸治療が適用となることが多いので、小児専門の治療は10歳前後までです。
夜泣き・かんむしの鍼灸治療
小児への鍼治療は、専用の鍼を使い、30秒から長くとも10分程度の短時間で、皮膚を介して弱い刺激を与えることを主に行います。皮内には刺入せず、皮膚を軽くなぞって刺激したり、軽くとんとんとたたいたりするだけのものです。
① 体幹部の皮膚鍼
頸の直下から尻の上まで脊際に沿って上から下へ(膀胱経)
鎖骨の下から鼠径部まで上から下へ(胃経)② 四肢の皮膚鍼
両側の前腕の親指側を肘から手首まで(肺経)
両側の下肢の内側を膝から足首まで(脾経)③ 頭部の皮膚鍼
頭頂部とその前方の脇2箇所(神経過敏の状態を鎮静する)④ 身柱の灸
小児の神経過敏に、江戸時代以前より「ちりげ(散気)の灸」として常用されていました。身柱:3番胸椎棘突起の下(肩甲骨間のほぼ中央)に灸をするもので、子どもの万病に効き健康に育つとされていました。 -
咽頭痛、口腔痛の原因となる疾患はいろいろ考えられますが、どのような原因であっても鍼灸治療における対処法はほぼ共通しています。
咽頭痛の原因として多いのは、ウイルス感染による咽頭粘膜及びリンパ組織の炎症である急性咽頭炎(かぜ症候群の初期状態)ですが、それが慢性化した慢性咽頭炎も対象となります。かぜ症候群の初発症状で適切な治療を施すことによって合併症や持病の悪化を防ぐことができます。咽頭痛はとくに飲食の嚥下時に激しい痛みが伴います。
扁桃は、咽頭粘膜内に発達したリンパ網様組織で、口峡を中心にワルダイエル扁桃輪を形成していますが、中でも口蓋扁桃が最も重要となっています。口蓋扁桃は上気道における感染防御の機能を担っていて、常に炎症に曝露されている生理的炎症臓器であるといえます。扁桃炎の原因は、細菌感染であり、起炎菌としてはレンサ球菌、ブドウ球菌、肺炎球菌などです。通常、風邪や免疫低下、気候の変化、あるいは過労などによって発症しますが、発熱、頭痛、全身倦怠を初発症状とし、39~40℃の高熱を発し、ときには悪寒戦慄を伴います。
咽頭炎、扁桃炎に対する鍼灸治療は、症状が初期の段階か、あるいは症状が安定した状態を対象とし、高熱及び悪寒戦慄を伴う場合は対象外となります。そして、症状の場所に応じた経絡治療と慢性化を阻止する為の免疫力増強を目指した治療を行い、慢性咽頭炎に対しては体質改善を目的とした全身治療を行い、免疫力低下の要因を是正することによって症状を軽くすることができます。
口腔の炎症には、粘膜に粟粒大の水疱を生じるアフタ性口内炎、口唇・頬粘膜ヘルペス、口角に潰瘍のできる口角糜爛症、舌粘膜の発赤と腫脹、舌苔を生じるカタル性舌炎などがあり、鍼灸が良い適応になる場合があります。
咽頭痛、口腔痛の鍼灸治療
鍼:翳風、風池、大杼、天容、扶突(または傍廉泉:廉泉と胸鎖乳突筋前縁の中間)、曲池皮膚鍼:脘鍼にて前頸部から後頸部の皮膚にかけて30~40箇所への接触刺激、特に腫脹して圧痛のあるリンパ節の部分にはその直上と周辺に集中的に接触鍼を行います。灸:風府、大杼に7~15壮、合谷に20壮を施灸します。
刺絡:大腸経に圧痛・腫脹などの熱症状がある場合は商陽、小腸経の場合は少沢、三焦経は関衝に対して刺絡を行います。 -
現代社会人は、会社でパソコンを1日中凝視し、通勤の行き帰りにはずっと携帯(スマホ)を操作しているという状況ですから、肩こり、頭痛はもとより眼の疲れが出ないわけがありません。その眼の疲れが究極状態になると、眼の痛み、視界のかすみ、頭痛、嘔吐などが起きる様になります。そして睡眠をとっても回復しないような重篤な状態になります。これを眼精疲労と言い、単なる眼疲労と区別しています。
パソコンや携帯画面を注視していると、まばたきの回数が極端に減ります。その結果、涙が蒸発してドライアイになりやすくなります。ドライアイも眼精疲労の主要原因の一つです。
また、パソコンや携帯画面を注視すると、眼の焦点を合わせる毛様体筋が極度に緊張し、一時的に近視のような状態になり、これを仮性近視、あるいは、調節緊張性近視と呼びます。
眼精疲労・仮性近視の鍼灸治療
後頭部の風池、背部兪穴である肝兪、顔面部の攅竹、太陽が鍼の治療穴となります。その他、経穴に硬結、圧痛があれば、天柱、陽白、肩井、合谷などを追加するのも効果的です。灸は風池、和膠、肝兪を使います。改善策
眼精疲労・仮性近視は、日常の生活習慣を見直すことで改善が可能です。
① 眼を使うときは、「正しい姿勢」と「適度な明るさ」で
・ 暗いところで本を読んだり字を書いたりしない
・ テレビははなれて見る② 適度に眼を休めて運動もしましょう。
長時間、毛様体筋を緊張させたままにすることはあまりよくありません。肩こりなどと同じで一定の姿勢でじっとしていると筋肉が固くなるように、長時間じっと見つめていると毛様体筋が緊張したままになり、それを繰り返すと近視が進行しやすくなってしまいます。
・ 勉強や読書は、1時間に10分間くらい眼を休ませることが必要です
・ テレビやパソコンの画面は40分以上見続けないようにし、適度に眼を休めます
・ ゲーム機は一日30~60分以内にし、30分ごとに休憩します
・ パソコン作業が続くときは、作業中にときどき遠くを見たり、意識的にパチパチまばたきしたり、眼を上下左右にぐるぐる動かします③ 遠くを眺めるのも効果があります。時々屋外へでて運動をしましょう。
・ 屋外で遠くの景色を見るようにします。遠くの景色を眺めることは、緊張した毛様体筋を弛緩させ、近視を進みにくくします。
・ 運動や散歩などで体を動かすと、固くなった毛様体筋や眼を動かす外眼筋にも良い影響があります。
・ 運動は、勉強や仕事のストレスを心身共にリラックスさせる効果があります。④ 規則正しい生活と栄養バランスの良い食事
⑤ 以下の方法を就寝前に行うと症状を和らげる効果があります。
・ 眼の周りの筋肉のマッサージ
・ 眼を温める:人肌よりやや熱めのおしぼりを用意し、両眼の上から1分ほど覆います -
排尿とは、腎臓で生成された尿が膀胱に貯まり(蓄尿)、それが一定以上貯まると尿意を感じて意志によって貯まった尿を排出する(排尿)という一連の過程のことを言います。この過程に問題が生じた場合を排尿異常と呼びます。排尿異常には以下のようなものが挙げられます。
排尿痛
多くは膀胱と尿道が該当する下部尿路の疾患が原因で生じるものです。尿路感染症により尿路、膀胱内に炎症が起き、それが痛みの原因となります。特に膀胱三角部と呼ばれる部分は感覚神経が豊富にあり痛みを感じやすくなっています。女性では膀胱炎、男性では前立腺炎がその代表的な疾患です。
頻尿
健常者の1日の尿量は1000~1500mLで、1回の尿量の平均は200~400mL程度です。また、排尿回数は4~8回が標準です。頻尿は日中覚醒時の排尿回数が8回以上のものを言い、夜間頻尿は夜間就眠中に覚醒しての排尿障害が2回以上のものを言います。頻尿の原因として最も頻度が高いのは急性膀胱炎で、主に細菌感染によって膀胱粘膜に炎症が起き、知覚過敏となって尿が少し貯まっただけで尿意を催すものです。
その他、膀胱内部の癌や結石などにより膀胱容量が減少した場合に、あるいは前立腺肥大、尿路狭窄等により下部尿路が通過障害を起こすと排尿筋が肥厚して神経過敏になった場合に頻尿が起きます。排尿中枢やその神経の経路が傷害されて起きる神経因性膀胱、器質的には異常がなく神経質な人で起きる心因性頻尿があります。
さらに、利尿剤は総尿量を増やすので頻尿となり、降圧剤など副交感神経遮断薬である抗コリン薬などは1回の排尿量が減り頻尿となります。
尿失禁
自分の意思によらず尿が漏れ出てしまう状態を言います。腹圧性尿失禁は高齢の多産婦に多く、くしゃみや咳などお腹に力が入ったときに尿が漏れ出てしまうものです。排尿中枢やその神経の経路が障害されて生じる神経因性膀胱で頻尿となりますが、尿意を催したときトイレが間に合わなければ尿失禁が起きます。
脊髄損傷では上位中枢と下位中枢が両方とも傷害されるため、尿意が消失し反射性の膀胱収縮により頻尿となり尿失禁を起こした場合、反射性尿失禁と呼びます。大脳障害で抑制が効かなくなり失禁するものを運動性切迫性尿失禁、膀胱の知覚過敏で起きたものを知覚性切迫失禁と呼んでいます。
排尿困難・尿閉
尿意はあっても膀胱の尿をスムーズに排出できない状態を言います。前立腺肥大症や、前立腺癌、尿道結石など尿道の狭窄で排尿困難が起き、病状が進行すると閉塞されてしまうため尿閉となります。
また、排尿中枢やその神経の経路の障害による神経因性膀胱でも意志による排尿が困難となり、排尿困難となります。糖尿病になると末梢神経障害により尿意が起こりにくくなり、排尿筋の収縮も弱くなるため排尿障害が起きます。
膀胱炎
急性膀胱炎は、疲労などで免疫力が低下しているようなときに、多くは大腸菌、次にブドウ球菌の感染により起きます。抗生剤で炎症が治まれば鍼灸の対象になります。また、急性からから移行して慢性膀胱炎となったり、ウィルスが原因と言われる無菌性の膀胱炎もあり、いずれも鍼灸のよい適用となります。
前立腺肥大症
前立腺は、男性だけにあるホルモン生殖器官で、膀胱の出口にあって尿道が中心を通っており、精液の一部である前立腺液を分泌しているところです。この前立腺の肥大は加齢に伴って自然に起こると言われており、60歳以上の7割で見られます。前立腺の肥大が尿道を圧迫すると、尿の出や勢いが悪くなったり、残尿感、頻尿などの排尿障害が起こります。合併症として、尿路感染症を起こす危険性が高くなり、そのまま放置していると腎臓にも影響が及び、腎不全を起こす事もあります。
排尿異常の鍼灸治療
共通鍼灸治療: 腎兪・膀胱兪・曲骨
鍼のみ、灸のみでも効果はありますが、併用治療が一層有効です。
頻尿・排尿痛・尿失禁
鍼: 関元・陰谷・崑崙
灸: 命門・崑崙
排尿障害は腎経、肝経の治療、頻尿・尿失禁は腎経と膀胱経を補う治療を行います。
排尿困難・尿閉
鍼: 委陽・行間
灸: 曲泉・陽陵泉
尿閉などの障害に対しては肝・胆経の治療を中心に腎経を補助的に使います。
排尿異常の療養
刺激性の食べ物、不消化のものは避けて、便秘に向かないように注意します。過労を避けて安静にし、下腹部を温めます。
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更年期障害とはどんな病気か
更年期は、性成熟期から生殖機能喪失期への移行期(45~55歳)にあたり、平均51歳で訪れる閉経の前後約5年間ほどの期間に生じる自律神経失調症状と精神症状が相互に関係しあって起こる「不定愁訴」の総称と考えられます。
原因は何か更年期になると、加齢に伴う卵巣機能の低下によって卵巣から女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が減りますが、それをカバーするために性腺刺激ホルモン(FSHやLH)が過剰に分泌されることになり、いわゆる「ホルモンバランスの乱れ」が起こります。これが脳の視床下部にある自律神経中枢に影響を及ぼして自律神経失調症を引き起こします。また、この年代の女性を取り巻く家庭や社会環境の変化からくる心理的ストレスが大脳皮質‐大脳辺縁系に影響を与え、憂うつや情緒不安定などの精神症状を引き起こします。この自律神経失調症状と精神症状が相互に影響し合って、更年期障害の病状を複雑にします。
症状の現れ方更年期障害の症状は、以下のように自律神経失調症状、精神症状、その他の症状に分けられますが、通常、自律神経失調症状と精神症状は混在しています。自律神経性更年期障害は、エストロゲンの減少により自律神経のバランスが乱れ、血液循環などの働きがうまくいかなくなって起こる症状で、「血管運動系障害」といいます。身体的な不調、不快な症状の多くを占めています。代表的なものは、ホットフラッシュ(突然顔がカーッと熱くなり、汗がダラダラ出るのぼせやほてり)の症状です。ホットフラッシュは閉経女性の多くに認められ、数年間の長期にわたる場合もあります。
身体的な不調としては、このほかにも動悸、めまい、息切れ、耳鳴り、頭痛、コリ、倦怠感など、全身にさまざまな症状がみられます。また、精神症状としての憂うつは、閉経女性の半数近くに認められています。また、最近の調査では、日本の更年期女性の特徴として、ホットフラッシュよりも肩こりや憂うつを訴える頻度が高いことがわかっています。また、精神的症状としては、イライラ、落ち込み、不安、不眠、意欲の低下などで、身体的症状と一緒にあらわれることが多いものです。
自律神経失調症状の現れ方
血管運動神経症状 のぼせ、発汗、寒気、冷え、動悸 精神的症状 情緒不安定、イライラ、怒りっぽい、抗うつ気分、涙もろくなる、意欲の低下、不安感 運動器症状 腰痛、関節・筋肉痛、手のこわばり、むくみ、しびれ 消化器症状 嘔気、食欲不振、腹痛、便秘・下痢 皮膚粘膜症状 乾燥感、湿疹、かゆみ・蟻走感 泌尿生殖器症状 排尿障害、頻尿、性交障害、外陰部違和感 胸部症状 胸痛、息苦しさ 全身的症状 疲労感、頭痛、肩こり、めまい 更年期障害の鍼灸治療
◎ 共通治療: 風池・肩井・厥陰兪・関元兪・次膠・関元への鍼、風池・関元兪・関元への灸
○ 腎経病変(太り気味、痩せている、皮膚が浅黒く光沢がない、足腰の冷え症、腰痛、下腹痛、のぼせ症、寝汗など): 腎兪・気海・復溜(陰谷)への鍼、腎兪・中極・太谿への灸
○ 肝経病変(痩せ形、色は蒼白、めまい、全身のふるえ、季肋下部の張り、頭痛・関節痛、イライラ感、憂うつ、不眠など): 肝兪・期門・蠡溝(曲泉)への鍼、肝兪・曲泉への灸
○ 脾経病変(脂肪質で肥満、皮膚が黄色味がかる、倦怠感、筋痛、胃部不快感、腹痛、悪心、嘔吐など): 脾兪・中脘・梁門・足三里・三陰交への鍼、脾兪・中脘・三陰交への灸
○ 肺経病変(骨張って痩せ形、皮膚は白くつやがない、汗をかきやすい、皮膚の掻痒感、肩背痛、口内乾燥など): 肺兪・心兪・天枢・気海・曲池への鍼、肺兪・天枢・曲池への灸