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  • 2018年12月27日(木)より2019年1月3日(木)は冬休みで休診させて頂きます。2018年12月26日(水)までと2019年1月4日(金)からは通常通り営業致します。2019年も本郷まこと治療院をよろしくお願い致します。

  • うつ病とは

    厚生労働省が実施している調査によれば、精神疾患により医療機関にかかっている患者数は、近年大幅に増加しており、1999年に200万人だったのが2011年は320万人、2014年は390万人となっています。その内訳としては多い順に、うつ病、統合失調症、不安障害、認知症などとなっており、 近年においてうつ病や認知症などの著しい増加が顕著です。

    うつ病は、精神活動のエネルギーが欠乏した状態であり、それによって憂うつな気分やさまざまな意欲(食欲、睡眠欲、性欲など)の低下といった心理的症状が続くだけでなく、さまざまな身体的な自覚症状を伴う脳の病気です。即ち、エネルギーの欠乏による全身を統合する脳のダメージにより、システム全体にトラブルが生じてしまっている状態と考えることもできます。

    脳のエネルギーが欠乏していなければ、自然治癒力によって憂うつな気分も回復し元気になるのが通常です。時間の経過とともに改善しない、あるいは悪化する場合には生活への支障が大きくなり、「病気」としてとらえることになります。そのため、仕事・家事・勉強など本来の社会的機能がうまく働かなくなり、また人との交際や趣味など日常生活全般にも支障を来すようになります。

     

    うつ病の種類と特徴

    うつ病を分類する場合に、①症状の現れ方、②重症度、③初発か再発か、④特徴的な病型などの分類の仕方があります。

    ① 症状の現れ方による分類

    うつ病の中で、うつ状態だけが起こるものを「単極性うつ病」、うつ状態と躁状態の両方が起こるものを「双極性うつ病」と呼びます。

     

    ② 重症度による分類

    症状による仕事や日常生活に現れる支障の程度による分類です。「軽症」は、仕事や日常生活、他人とのコミュニケーションに生じる障害はわずかで、周囲の人はあまり気がつかないことも多いレベルです。一方「重症」は、仕事や日常生活、他人とのコミュニケーションが明らかに困難なレベルです。「中等症」は、「軽症」と「重症」の間に位置します。

     

    ③ 初発か再発かによる分類

    「単一性」か「反復性」かの分類です。「反復性」の場合は、特に再発防止に対する対応が重要になってきます。

     

    ④ 特徴的な病型による分類

    「メランコリー型」、「非定型」、「季節型」、「産後」などがあります。

    「メランコリー型」は、典型的なうつ病と言われることの多いタイプです。さまざまな仕事や責務、役割に過剰に適応しているうちに脳のエネルギーが枯渇してしまうような経過をたどるものを指しています。特徴としては、良いことがあっても一切気分が晴れない、明らかな食欲不振や体重減少、気分の落ち込みは決まって朝がいちばん悪い、早朝に目が覚める、過度な罪悪感などがあります。

    それに対し「非定型」の特徴としては、良いことに対しては気分がよくなる、食欲は過食傾向で体重増加、過眠、ひどい倦怠感、他人からの批判に過敏などがあります。

    「季節型」は「反復性」の一種で、特定の季節にうつ病を発症し季節の移り変わりとともに回復がみられます。どの季節でも起こり得ますが、冬季うつ病が有名で日照時間との関係が言われています。

    「産後」のうつ病は、産後4週以内にうつ病を発症するものです。ホルモンの変化、分娩の疲労、子育てに対する不安、授乳などによる睡眠不足など、不健康要因が重なることが影響していると考えられています。

     

    うつ病の原因

    さまざまな研究によって分かっていることは、「うつ病を引き起こす原因はひとつではない」ということです。生活の中で起こるさまざまな原因(要因)が複雑に結びついて発症してしまいます。

    まず最もきっかけとなりやすい「環境要因」ですが、家族や親しい人の死や離別、仕事や財産、健康など大切なものを失う、人間関係のトラブル、家庭内のトラブル、昇格、降格、結婚、妊娠など職場や家庭での役割の変化など、さまざまなできごとが要因となり得ます。

    また「性格傾向」も発症要因のひとつです。義務感が強く、仕事熱心、完璧主義、几帳面、凝り性、常に他人への配慮を重視し関係を保とうとする性格の持ち主は、エネルギーの放出も多いということになります。努力の成果が伴っているうちはエネルギーの回復もみられますが、成果が出せない状況が生じたり、エネルギーの枯渇が起これば発症の危険が高まります。

    その他「遺伝的要因」、「慢性的な身体疾患」も発症要因のひとつです。最近の研究でうつ病は、脳内の神経細胞の情報伝達にトラブルが生じているという考え方があります。この情報伝達を担うのが「神経伝達物質」というもので、中でも「セロトニン」や「ノルアドレナリン」といわれるものは、人の感情に関する情報を伝達する物質であることが分かってきました。前述のさまざまな要因によって、これらの物質の機能が低下し、情報の伝達がうまくいかなくなり、うつ病の状態が起きていると考えられています。

     

     

    うつ病の前兆の状態

    まず、うつ病の主要な症状である「憂うつ感」の特徴を挙げます。

    ① 楽しみや喜びを感じない

    通常なら楽しかったようなことでも、楽しみや喜びを感じなくなります。何をしていても憂うつな気分を感じてしまいます。

    ② 何か良いことが起きても気分が晴れない

    きっかけとなったできごとや問題が解決したり、自分にとって良いことが起こっても、気分が晴れない状態が続いてしまいます。

    ③ 趣味や好きなことが楽しめない

    健康な状態であれば、嫌な気分のときに好きな趣味の運動等で思いっきり汗を流したりすることで、気分が晴れたりするものです。うつ病になっていると楽しめないどころか、疲労感ばかりが増してしまいます。

    うつ病はこうした症状が2週間以上継続する状態をいいます。早い時点で自覚できれば、発症を未然に防げる可能性も高くなります。ただ、こうしたうつ病を代表とするメンタルヘルス疾患は生活習慣病にもたいへん類似しており、日々生活をしている中で、なかなか自覚しにくいという特徴があります。

    そんな中で、エネルギー充電である睡眠に注目すると、「疲れているのに眠れない」となると、充電は底をつき自然治癒力が減少し不健康な方向へ進んでしまいます。最近では、不眠がある人は不眠のない人に比べ、3年以内にうつ病を発症するリスクが4倍になるなど、不眠とうつ病の関連性を示す研究報告が多く、注目されています。睡眠に注目する利点は、自覚しやすい点です。寝つきに30分以上かかる、途中で何度も目が覚める、朝やたら早く目が覚める、熟睡感がなくなる、などに気がついたら、まずは生活習慣を見直すことが重要です。具体的には、仕事の仕方を再検討する、就床前4時間のカフェイン摂取を避ける、直前までパソコンやスマホの画面を見つめない、ぬるめのお湯での入浴や音楽などでリラックスする、目覚めたら日光を取り入れる、趣味など自分のための時間を確保する、休日の過ごし方を工夫するなどがあります。

     

    うつ病の鍼灸治療

    うつ病は心因性の疾患であって、その治療は精神的症状の解消を目的にしているわけですが、その状態を作っている基となる自律神経系の過敏性や不安定性を、鍼灸が改善し、付随的な身体的症状を軽減、消失させることで大きな効果を出すことができます。

    : 百会、太陽、風池、厥陰兪、肝兪、中脘、内関、蠡溝

    百会、太陽、風池は神経系中枢の異常興奮を鎮め、不安、緊張、焦燥、不眠、頭重などの症状を除く効果が高い。厥陰兪、内関は心悸の興奮に効果があり、中脘は食欲不振、胃部重圧感、吐き気などに有効。

    : 風池、肝兪、内関

     

    また、各症状に合わせて以下のような鍼灸治療を追加すればさらに効果が上がります。

    ①       頭痛、頭重に対しての: 天柱

    ②       不眠、めまいに対しての: 完骨

    ③       発汗、発疹に対しての: 腎兪、陰谷

    ④       四肢の痺れ、運動麻痺、疼痛、倦怠感に対しての: 曲池、足三里

    ⑤       動悸、頻脈、不整脈に対しての: 膻中、郄門

    ⑥       呼吸困難に対しての: 肺兪、太淵

    ⑦       食欲不振、嘔吐、下痢、便秘に対しての: 脾兪、大腸兪

    ⑧       性欲低下、月経異常、ED等生殖器系疾患に対しての: 腎兪、関元兪

     

    うつ病の療養指示

    うつ病は治療を始めればすぐに治療が終わるというものではありません。治癒していく過程にはある程度の期間が必要になります。 治っていく経過も、良くなったり、悪くなったりという小さな波をもちながら、階段をゆっくりと1段ずつ上るように段階的に改善していきます。そして、うつ病の8割ほどはほとんど以前の元気が回復している状態=「寛解」状態を迎えることができるとされています。

    うつ病の鍼灸治療は、自律神経系の過敏性や不安定性を改善することにより、現れた身体的症状に対して働きかけて精神状態の好転を期待するものですが、合わせて自律訓練法、行動療法などの広い意味での心理療法の採用が可能ならば治療のさらなる改善が図れることでしょう。

     

     

  • 2018年10月1日より価格を改定させて頂きます。詳しくは本文をご覧ください。

  • 本院は平日19:00まで営業しておりますが、18:00~19:00の時間帯はご予約のみの対応とさせて頂いております。このお時間に施術をご希望の方は「18:00」までに、お電話又はメールにてご予約と受諾の確認を頂きますようお願い申し上げます。

  • 本年は夏休みは設けず通常通り営業致しますので、ご利用をお待ちしております。

  • 高血圧の90%以上は、明確な原因が不明の本態性高血圧症です。しかし、生活習慣と遺伝的な体質が関係しているとことは解明されています。 高血圧は、原因により「一次性高血圧」と「二次性高血圧」に分類されます。特に明らかな異常がないのに血圧が高くなるのを、「一次性高血圧」、または「本態性高血圧」と呼ばれ、食塩の過剰摂取、加齢による血管の老化、ストレス、過労、運動不足、肥満、そして遺伝的要因などがあげられています。一方、 「二次性高血圧」は、腎臓病やホルモン異常など、原因となる病気があるものを言います。こちらは、原因となる病気が治ると、高血圧も改善します。

     

    血圧を上げる要因

    ① 肥満

    肥満になると、酸素消費量の増加に伴う、心拍出量、循環血液量の増加で血圧が上がります。つねに体重をコントロールすることが大事です。

    ② ストレス

    仕事や心配事によるストレスや過労、そして睡眠不足は、血圧を上げる大きな要因です。趣味に熱中したり、スポーツで気持ちのよい汗を流したり、十分な睡眠をとったり…つねに心と体のリフレッシュを心がけましょう。

    ③ 喫煙

    末梢血管の収縮で血圧が上がります。また、タバコは虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)の危険因子。禁煙をおすすめします。

    ④ 塩分の過剰摂取

    なぜ塩分の過剰な摂取が問題なのでしょうか? 塩分(ナトリウム)をとりすぎると、血液中の塩分濃度が上がらないように、水分で薄める作用が働きます。そのため体内の水分が多くなり、血液の全体量が増大し、血圧が上昇するのです。血圧が上昇すると腎臓から水と塩分が効率的に排泄されるようになります。

    ⑤ 遺伝的な要因

    一次性高血圧には、遺伝的な要因が関係しています。両親とも高血圧の場合、高血圧になる素因を子供が持つ確率は70%、親のどちらかが高血圧の場合は30~60%、両親のどちらも高血圧でない場合でも、4~30%という調査結果が出ています。これは、あくまで高血圧になりやすい遺伝的因子の割合で、生活習慣に注意することによって発症しないケースもあります。遺伝との関係を知り、生活習慣に気をつけることは高血圧の予防につながります。

     

    高血圧の鍼灸治療

    高血圧は長年月の間に脳、心、腎などに障害を引き起こし、やがては生命に危険を及ぼす病態に進行する可能性を持っています。鍼灸により血圧の適正なコントロールが継続できれば、鍼灸が個体の回復力を元にしていることから、高血圧と動脈硬化の相互的な悪循環を絶つ効用と、医原病を生じる二次的な副作用を封じられることも期待でき、推奨できる療法であると言えます。

     

    鍼: 曲池、足三里、懸鐘、洞刺注1)、兪刺注2)

    注1)   洞刺: ほぼ人迎穴に相当。頸動脈洞部に刺鍼し血圧調整に影響を与えようとするもので、臨床的に降圧効果が認められています。最大血圧の低下に効果的

    注2)   兪刺: 膈兪、八兪、肝兪、胆兪、脾兪、胃兪の左右6穴ずつに施鍼し、交感神経幹への間接的刺激をおこなうものです。最低血圧の低下に効果的

     

    灸: 曲池、足三里、懸鐘

    補助灸: 肩井、肝兪

    米粒大のもぐさで5~7壮施灸します。

     

     

    療養指示

    高血圧症と脳血管障害による死亡率とは相関関係にあり、食事、環境に充分注意を払う必要があります。

    冬は寒さの影響で血圧の変動が大きく、血圧の管理が難しい季節です。特に、起床時や入浴時には、注意が必要です。起床時に部屋が寒いと、急激に血圧が上昇しがちです。少し前からエアコンのタイマー設定などで、部屋を暖めるようにしましょう。入浴時には、脱衣所や浴室の寒さによる血圧上昇、入浴による血圧低下など、変動が大きくなりがちです。脱衣所は小型の暖房器具で、浴室は入るまえにシャワーを1〜2分流すなどの方法で暖めておくと、血管への負担が少なくなります。

    夏は、血圧にはあまり影響がないと思われるかもしれません。ところが脳梗塞が最も多いのは、実は夏なのです。その原因は水分不足にあります。血圧が高めで、動脈硬化を起こしていると、水分不足から血管が詰まりやすい状態になりやすいので、特に注意が必要です。夏には意識的に早めに水分を補給し、家庭血圧の測定などで血圧の変動にも注意しましょう。

     

    食生活を見直す

    日食生活の中でまず見直したいのが塩分の摂取量です。減塩による降圧効果には個人差がありますが、世界的にみても日本人は塩分をとりすぎている傾向があるので、まず減塩を心がけることが大切です。日本高血圧学会のガイドラインでは、1日当たりの塩分(食塩)摂取量の目標を「6g未満」と設定していますが、同時に「より少なくすることが理想」ともしています。これは、欧米ではすでに理想的な摂取量を「3.8g」とするガイドラインが示されているためです。また、最近、高血圧が急増している中国での調査で、「メタボリックシンドロームの人ほど塩分の影響を受けやすい」というデータもみられます。高血圧に加え、肥満や高血糖などの症状がある人は、十分な注意が必要です。

     

    減塩のコツとして、以下のようなことが上げられます。

    揚げ物や焼肉などは、しょうゆやソースでなく、レモンやユズ、こしょう、ごまで食べる。

    天然だし(昆布、シイタケなど)をしっかりとり、しょうゆや塩を減らす。

    ラーメンやそば、うどんの汁は半分くらい残す。

    寿司につけるしょうゆの量は少しにする。

    薄味に少しずつ慣れるようにする。

     

    血圧を調節する成分に、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのミネラルがあります。

    カリウムには、腎臓から余分な塩分(ナトリウム)を排出する働きがあります。マグネシウムは、その働きを助けます。カリウムは野菜や果物、海藻類、豆類などに多く含まれています。中でも野菜類や海藻類はカロリーが低く、メタボリックシンドロームの人にもいいので、しっかり食べることが大切です。

    マグネシウムは、海藻やナッツ類、豆類などに含まれています。野菜サラダに豆やナッツを入れるのもいい方法です。ただし、血糖値が高い人は果糖の多い果物は控えめに。また腎臓病の場合には、カリウムのとりすぎで悪化することもあるので、注意が必要です。

    また、カルシウムが不足すると、副甲状腺ホルモンやプロビタミンDが分泌され、これが心臓や血管を収縮させて血圧が上昇します。高血圧になりやすい人には、カルシウムの吸収や調節の機能がよくない人も多いので、カルシウム不足にならないように心がけることが大切です。カルシウムの吸収率が高いのは牛乳や小魚類です。日本人の食生活では、カルシウムが不足しがちなので、意識的にきちんととることが大切です。また、マグネシウムは、カルシウムの吸収を助けるので、ナッツ類や豆類なども一緒にとりましょう。

     

    高血圧と生活習慣

    高血圧は典型的な生活習慣病なので、その要因となる運動不足やアルコールの取り過ぎなどを見直してみましょう。適度の運動には、高血圧を改善する効果があります。さまざまな調査・研究から、運動によって私たちの体内では次のような作用が活発になり、相乗的に血圧を下げる効果がみられることがわかっています。

    ・ 交感神経の働きが低下して血管が拡張し、血圧が下がる。

    インスリンの働きがよくなり、相対的に分泌量が減り、インスリンのもつ血圧上昇機能が弱まる。

    利尿作用が活発になり、体液量が低下し、血圧が下がる。

    アルコールは一時的には血流をよくし、血圧を下げる効果もみられます。しかし、飲みすぎると反対に血圧を上げます。飲みすぎの状態が続くと、心疾患のリスクが急速に高くなります。一般的に健康の目安となる適量は、男性で日本酒1合、ビールなら中ビン1本、焼酎なら半合弱とされています(女性は半分〜3分の2程度)。

    喫煙は一時的に血圧を上昇させます。さらに、動脈硬化を促進し心筋梗塞や脳卒中の原因となることがわかっています。さらに、メタボリックシンドロームの重要な危険因子でもあります。それだけに「血圧が高め」の人は節煙するか、できれば禁煙をする方がいいでしょう。

     

     

     

  • 血圧が正常範囲より低い状態が継続していて、頭痛、倦怠感、めまい感などを愁訴とするとき低血圧症と呼びます。ただ、血圧が低いだけでそれによって不快な症状をもたらさないものや、臓器循環の障害を伴わないものは体質性低血圧と呼び、治療対象にはなりません。治療対象になる低血圧症は以下のようなものです。

    ① 症候性低血圧症

    血管系の疾患として心臓弁膜症、心筋梗塞、心筋炎、心嚢炎、発作性頻脈症などがあり、呼吸系疾患では肺結核、肺気腫、気管支喘息があります。消化器系疾患では胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、胃癌、肝硬変などによる栄養失調でみられます。内分泌系疾患ではアジソン病、粘液水腫、重症の糖尿病などによる副腎機能低下でみられます。これらのうち一部は鍼灸治療の対象になりますが、急性の虚脱やショック症状がある低血圧症の場合は禁忌となります。

    ② 本態性低血圧症

    原因の明確でない低血圧症のことで、女性に頻度が高く鍼灸治療の対象になります。

    ③ 起立性低血圧症

    起立時に血圧の降下を起こすもので、自律神経系の異常が想定されます。

     

    低血圧症の鍼灸治療

    生体は適切な経絡・経穴に刺激を受けると、自分自身を本来の正常な生理状態に戻そうとする機能があります。そういう意味では高血圧症でも、低血圧症でも病んでいるところを改善するという治療方針は共通のものです。例えば冷え症の治療や消化器系の機能改善の治療と同時に低血圧症の治療が可能となります。

     

    鍼: 天柱、膈兪、腎兪、中脘、関元、三陰交

    灸: 天柱、腎兪、関元、三陰交

    鍼灸併用も有効で、冷え症の治療ともども推奨されます。

     

    冷え症の症状が強い場合は以下の治療穴を追加します。

    鍼: 次膠、陰谷、復溜

    灸: 太谿(米粒大にて10~15壮)

     

    頭痛・頭重を伴う場合

    鍼: 百会、風池、大杼、身柱

    灸: 風池

     

    めまいを伴う場合

    鍼灸: 完骨

     

    食欲不振・胃部膨満

    鍼灸: 脾兪、胃倉、梁門、足三里

    圧痛の顕著な穴には灸を追加します。

     

    喘鳴・咳嗽

    鍼: 肺兪、心兪、中府

    細鍼で弱刺激で行います。

     

    月経不順・性欲減退

    鍼: 肝兪、関元兪、復溜

     

    療養指示

    食事時間や量、睡眠時間などにおいて規則正しい生活基準を守ることが重要です。適度な歩行、体操などの運動を行い、乾布摩擦など皮膚の鍛錬、血流の改善を計ります。

    低血圧症は季節の変わり目に不調を起こしやすいものですが、早朝起床時に調整機能が働かないため、ゆっくり起き上がる習慣とめまいを起こしたときは一度横になり、そこからゆっくり起きる練習をします。

    食事についてはバランスの取れたものを摂取し、偏食は避けるように注意してください。ビタミンの補給も重要で、食塩は多少多めが良いでしょう。

     

     

     

     

     

     

  • 痔とは、肛門及び肛門周辺に生じる病気の総称です。特に、直腸や肛門などの粘膜の静脈が刺激されることにより発生するものを指すことが多いようです。痛みや出血などの症状があり、またそのせいで座ることや歩くことが困難になる場合もあります。

    日本人の痔の比率は高く、ある製薬メーカーの調査によると成人の3人に1人が痔持ちだとも言われています。男女比では、痔の種類にもよりますが、男性よりも女性に多いようです。痔を放置すると症状が悪化し、場合によっては大腸がんなどの重大な病気になる場合もあります。

     

    肛門の構造

    肛門は直腸から続く長さ約3㎝ほどの器官で、正確には肛門管と言います。食べ物の残滓を排泄し、便やガスの排出をコントロールします。内部を見ると、肛門管の粘膜下には直腸静脈叢があり、内壁は歯状線を境に粘膜(直腸)と皮膚(肛門)に分かれます。粘膜で覆われた直腸部分は、自律神経に支配されていて痛みなどの感覚はありませんが、肛門部分は皮膚と同じ脊髄神経に支配されているので痛みを感じます。そのため、歯状線より上の直腸部分にできる内痔核はあまり痛みませんが、歯状線より下の肛門部分にできる外痔核は痛みをより多く感じます。

    肛門の外側は内肛門括約筋、外肛門括約筋という筋肉に取り囲まれています。外肛門括約筋は、自分の意思でコントロールすることができます。排便が可能であれば、外肛門括約筋の収縮が解かれ、排便がおこります。これを「随意性排便」といいます。排便時は自力で外肛門括約筋をゆるめるとともに、いきむことで腹圧を高めて便を直腸から押し出します。外肛門括約筋は、自分の意思でゆるめようとしない限り収縮しているので、すぐに排便しないような状況下では、便意をこらえることができます。

    一方、内肛門括約筋は、不随意筋で下腹神経(交感神経)と骨盤神経(副交感神経)の支配を受け、睡眠中などの無意識下でも自動的に収縮して肛門を閉じています。

     

    痔の原因

    排便異常

    痔のほとんどは便秘や下痢がきっかけです。便秘のときの便は硬くなります。この硬い便を無理やり出そうとして強く力むと、肛門の皮膚が切れる裂肛やうっ血を起こしてイボができる痔核の原因になります。また下痢が原因になることも多く、勢いよく出る便や排便の回数が増えることで痔を悪化させたり、細菌に感染して痔ろうを引き起こすことがあります。

    同じ姿勢を続けたり、力むことの多い仕事

    クルマのドライバーやパソコン作業のデスクワークのように、座ったままでいるような仕事はお尻に負担がかかります。また美容師や販売員、板前のように立ったままの仕事も腹圧をかけることが多く、お尻がうっ血しやすくなります。重いものを持ち上げたり、運ぶような仕事も同様で注意が必要です。

    食べすぎ飲みすぎ、刺激物のとりすぎ

    酒の飲みすぎは下痢を招きやすくするとともに、生活のリズムも乱します。食べすぎや偏食はもちろん、刺激の強い香辛料のとりすぎも肛門部のうっ血の原因となり、痔を誘発することになります。

    運動不足や冷え、ストレスによる血行不良や肛門部の不潔

    運動不足や冷えは下腹部の血行不良を招き、肛門に負担をかけます。また、ストレスによって自律神経が乱れることでも肛門の血行不良が起こり、痔にななりやすかったり、悪化させることがあります。また、肛門部を不潔にしていると、肛門に炎症が起こりやすくなり、痔を誘発することがあります。

    妊娠や出産による肛門の圧迫

    妊娠によって子宮が大きくなると、肛門の圧迫や骨盤内のうっ血によって血行が悪くなり痔の原因になります。さらに出産の際にも強く力むので、痔を発生させたり悪化させたりすることになります。

     

    痔の種類と症状

    痔核(イボ痔)

    男性に多い症候です。肛門と直腸の境界周辺の粘膜の下は血管が密集して直腸静脈叢となっていますが、その血管がうっ血を起こし、それが膨らんでイボ状の塊になるのが痔核です。この塊が直腸の内側にできるのが内痔核で、痛みを感じることは少なく、排便時に大量の血が出ることもあります。そして肛門の外側にできるのが外痔核です。ある日突然、しこりのような塊ができて激しい痛みを伴います。

    裂肛(切れ痔、裂け痔)

    女性に多く、便秘症のいきみと硬い便との摩擦で肛門内部が傷つき、それが続くと傷が深くなって強い痛みと出血を引き起こします。排便のたびに激しく痛むために、排便を我慢し便秘となって再び肛門を傷つけるという悪循環に陥りがちです。過半数は内痔核と合併します。

    痔ろう(穴痔)

    主に下痢が原因となって直腸から肛門の周囲の粘膜に傷がつき、大腸菌などの細菌が侵入して、炎症が起こり、膿が溜まります。この肛門周囲膿瘍を放置していると、膿が自然に皮膚を破って外に流れだします。この膿が流れ出た通り道が肛門の周りに残るのが痔ろうです。肛門周囲の腫脹と共に灼熱感や痛みを感じます。また高熱や寒気、吐き気などの症状をともない、ときには40℃以上の高熱になることもあります。

     

    痔の鍼灸治療

    痔疾患には鍼よりも灸が適しています。

    灸鍼: 下膠、大腸兪

    下膠に灸すると刺すような熱感がありますが、痔核の治療には効果が得られます。大腸兪は補助穴として有効です。この両方を施灸することで相乗効果が得られます。鎮痛の目的で鍼を使用するのも良いのですが、鍼のみの効果としては灸に及ばないので、灸鍼併用が勧められます。

     

    疼痛: 痔核または裂肛で痛みの激しいときは以下の経穴を使用します。

    : 百会

    : 上巨虚、三陰交

    百会への施灸は、30壮でも50壮でも痛みが治まるまで続けます。

     

    出血: 出血量が多い痔症候には次の鍼灸を施します。

    : 孔最、上巨虚

    : 復溜

     

    療養指示

    痔の治療と予防には、生活習慣を改善することが重要です。まず食生活では、痔の最大の原因である便秘を避けるために食物繊維を摂取することを心がけます。逆に下痢も痔を悪化させるため、アルコールや香辛料などの刺激物を控えることが重要です。その他にも、トイレで力みすぎない、入浴で肛門を温めて血流を良くする、疲労やストレスをためすぎないなどがあげられます。

    排便のリズムをつくる

    便秘は痔の一番の原因です。とくに朝は便意を感じやすい時間帯ですが、このときに支度が忙しくて便意を我慢するような生活をしていては便秘を招きます。定期的な排便習慣を保つライフスタイルを確立しましょう。

    食生活を改善する

    朝食を抜くと、痔の大きな原因である便秘になりやすくなります。しっかり朝食をとれば胃が動き出し、大腸も活動しますので、毎日排便のある生活ができます。食事は食物繊維を意識しましょう。食物繊維は消化されず、大腸の運動を刺激して、排便をスムーズにします。暴飲暴食や多量のアルコールは下痢の元になりますので、控えるようにしましょう。

    同じ姿勢を長く続けない

    痔の予防には同じ姿勢を長時間続けないことが大事です。座りっぱなし、立ちっぱなしのときは、少しでも休憩タイムを作って体を伸ばしたり、肩を上下、足の屈伸などを心がけましょう。座ったまま動けないようなときは、ちょっと腰を浮かせてみるだけでも、お尻にかかる体重から解放され血行が戻ります。

    腰周りを冷やさない

    痔を助長する原因の一つに冷えがあります。冷えは血行を悪くして肛門部のうっ血を促すので、肛門の大敵です。とくに女性は下半身を冷やすような服装と冷房による冷えにも注意が必要です。

    適度な運動とストレスの解消を心がける

    運動不足やストレスは、肛門部の血行不良を招くことがあります。軽い運動を習慣にしましょう。とくに、便秘の解消にも効果的な腹筋運動がおすすめです。また、平日は読書やテレビ観賞、お風呂など手軽にできることで、休日は外出などで気分転換を図って日々のストレスを溜めこまない工夫をしてみましょう。

    温水洗浄便座を使う

    排便後、トイレットペーパーで拭いただけでは、肛門部の便はなかなか取り除けません。また、トイレットペーパーで強く拭くことで肛門の皮膚を傷つけることもあります。温水洗浄便座をぜひ活用しましょう。

    痔疾患を悪化させないためのケアをする

    日常生活のポイントは便秘を改善することです。排便のときの痛みを考えると躊躇しがちですが、便意があったらすぐにトイレに行き、5分以上力まない習慣をつけましょう。排便後も痛みが消えないときは、楽な姿勢で肛門を中心に温めると痛みが緩和されます。

    症状が緩和したら日常生活に適度な運動を取り入れることです。また買物などでもクルマやエスカレーター、エレベーターをなるべく使わないで歩き、体を積極的に動かす習慣をつけることが大切です。またできる限り毎日入浴か座浴で肛門の清潔を保ち、血行を良くしておくと効果的です。

     

     

     

  • 正常な腸では「蠕動(ぜんどう)運動」により、腸の内容物を肛門側に送ります。内容物が腸を通過する際に、含まれる水分が体内に吸収され適度な水分を含む便になります。理想的とされるバナナ状の便の水分量は70%~80%ですが、これが80%~90%になると通常より少し軟らかい状態の「軟便」に、水分量が90%を超えて液状またはそれに近い状態の水様便を「下痢便」と言います。下痢便や軟便を繰り返し、腹部不快感や腹痛を伴う状態を「下痢」といいます。排便の回数には関係ありません。

    腸の「ぜん動運動」が過剰になった場合、腸の内容物が急速に通過するため水分の吸収が十分に行われません。そのため、液状の糞便となり下痢便や軟便になります。また、腸から体内への水分吸収が不十分な時や、腸からの水分分泌が増えると、腸の中の水分が異常に多くなり下痢便や軟便になります。

     

    日常生活から考えられる原因

    1. 暴飲暴食

    発熱をともなわない下痢はほとんどが飲みすぎ、食べすぎ、冷えが原因です。疲れているときは特に消化機能が弱っているので、下痢になりやすくなります。

    1. アルコールや刺激の強い食べ物

    アルコールや、辛みの強い刺激物などを摂取すると、胃酸が多く分泌されすぎて、胃壁の粘膜を傷つけたり、腸のぜん動運動が高まりすぎて下痢を引き起こします。

    1. 冷えによる消化機能の低下

    冷たい物を飲みすぎるなどして胃腸が冷やされると、胃腸の血行が悪くなり、消化機能が低下し、下痢になります。また、冷え症によっても同様のことが起こります。

    1. 細菌やウイルス感染

    食中毒や赤痢、コレラ、風邪など細菌やウイルスの感染が急性の下痢の症状を起こすことがあります。これらの感染性急性下痢の症状は、発熱や腹痛、吐き気、嘔吐などをともなうのが特徴です。

    1. ストレスによる腸の痙攣

    ストレスなどで緊張が高まると、腸の動きをコントロールしている自律神経が乱れて腸が痙攣するので動きがにぶくなり、下痢や便秘になったり、下痢と便秘を繰り返すことがあります。

     

    下痢をともなう疾患

    1. 過敏性腸症候群

    精神的ストレスや情緒不安定などが原因で、腸のぜん動運動に異常が起こり、腹痛をともなう慢性的な下痢を引き起こします。ときに下痢と便秘が交互に起こることもあります。何週間も下痢が続いたり、一時的に治まり、その後再発という現象を繰り返すこともあります。

    1. 潰瘍性大腸炎

    何らかの原因で大腸の粘膜に慢性的な炎症を起こし、粘膜がただれたり、潰瘍が多発します。長期間下痢と腹痛が続き、粘液や血液の混じった便が出たり、発熱などの症状があらわれます。ストレスで症状が悪化し、比較的若い世代での発症が多くみられます。

    1. 大腸ポリープ

    大腸の内側にできるイボ状に突き出た腫瘍で、多くは良性ポリープですが放置すると大腸がんに進行することもあります。血便や下痢、便秘といった症状がみられることがあります。早期のものは、自覚症状がありません。

    1. 食中毒や風邪

    サルモネラ菌やO-157、ノロウイルスなどによる食中毒、ウイルス感染による風邪、コレラや赤痢などに急性の下痢の症状がみられます。これらの疾患は同時に腹痛、発熱、嘔吐をともなうことが多くみられます。

    1. 乳糖不耐症、アレルギー性胃腸炎

    乳糖不耐症は、牛乳などに含まれる乳糖を分解する酵素が少なくて、牛乳などを飲んだときに下痢を起こす疾患です。また、アレルギー性胃腸炎は、アレルギー体質の人が胃腸にアレルギーを起こす原因となる食品を摂取すると、下痢や嘔吐、腹痛などの症状を起こします。

     

    鍼灸治療

    鍼灸: 泄止(気海兪外方3寸)、腎兪、天枢

    泄止、および腎兪は下痢を止める作用があり、大腸兪は補法で下痢を止め、瀉法で便通をつけることが可能です。

    さらに天枢は下痢にも便秘にも供用できます。灸も効果があり、併用も可能です。

    臍の上の間接灸なども効果がありますが、長時間の施灸を要します。

     

    小腸性下痢

    吸収不良性下痢である慢性腸炎に見られます。腸内細菌の異常繁殖による腐敗、発酵によるもので、慢性腸炎の多くを占めています。

    鍼灸: 脾兪、胃兪、中脘、気海、足三里

    圧痛、硬結の強い経穴に施術を行います。

     

    大腸性下痢

    大腸過敏症による下痢が鍼灸によく適応します。

    鍼灸: 大腸兪、水分、上巨虚

    大腸兪は天枢と同様に便秘にも下痢にも用いられる経穴で、軽微な刺激を行います。

     

     

  • 腸のはたらきと排便のしくみ

    胃や小腸で消化された食物は、水分の多いどろどろの液状となって大腸に入り、ゆっくりと水分が吸収されて固形化(便塊化)し肛門へと送られます。もし便塊が何日も大腸内にあると、水分吸収はさらに進み便塊は硬く小さくなります。腸の動きは自律神経に支配されています。胃に食物が入ると自律神経の指令により、便を体外に送り出すための蠕動(ぜんどう)運動が始まります。そして便が直腸に達すると、そこから大脳に指令が送られ便意をもよおします。

    便通は基本的に毎日あるのが健康な状態です。3日以上なかったり便が硬くて量が少なく残便感があったりする状態を便秘と呼びます。女性や高齢者に多く、腹痛、腹部膨満感、食欲不振などの症状もあらわれます。肌荒れや肩こりなど、全身に影響が出ることもあります。

     

    便秘の原因

    便秘の原因には、毎日の生活習慣,腸や骨盤底の働きの異常,全身の病気,薬など様々なものが考えられます。偏食やダイエットにより食物繊維の摂取量が不足すると、便が少なくなり便秘になりやすくなります。また、体を動かすことが少ないと腸の蠕動運動が不活発になり便秘になります。さらに、強いストレスがかかると自律神経のバランスが崩れ、正常な腸の蠕動運動が起こらず便が滞って便秘につながることもあります。

     

    便秘の種類

    便秘には機能性便秘3種類と器質性便秘の計4種類に分けられます。鍼灸は機能性便秘には有効ですが、器質性便秘の鍼灸は内容により有効なものと無効なものがあります。

    機能性便秘

    [弛緩性便秘]=大腸の運動が低下

    女性や高齢者に多く、常習便秘の大部分がこのタイプです。腸管の緊張が弛んでしまい蠕動運動が十分行われないため、大腸内に便が長くとどまり、水分が過剰に吸収されて硬くなり、大槐または太くなります。

    おなかが張る、残便感、食欲不振、倦怠感、頭痛、肩こり、肌荒れ、イライラなどの症状が起きます。

    運動不足、水分不足、食物繊維不足、腹筋力の低下、極端なダイエットなどが誘因となります。

    [痙攣性便秘]=大腸の過緊張

    副交感神経の過度の興奮によって腸管が過緊張で便がうまく運ばれず、ウサギのフンのようなコロコロとした便になるタイプです。食後に結腸運動の亢進によって左下腹部痛、残便感などの症状が起きることもあります。また便秘と下痢を交互にくり返すこともあります。

    精神的ストレス、環境の変化、過敏性腸症候群などが誘因に

    [直腸性便秘]=直腸に便が停滞

    便が直腸に達しても排便反射が起きづらく、直腸に便が停滞してうまく排便できなくなるタイプで、弛緩性便秘に合併することが多いです。

    高齢者や寝たきりの人のほか、痔や恥ずかしさなどにより排便を我慢する習慣がある人に多い。

    器質性便秘

    イレウス(腸閉塞)、大腸がん、腸管癒着などの器質的な原因があって、消化管(小腸・大腸)に通過障害が起こるタイプのものだと鍼灸は不適となります。ただし、脱肛、痔核などの痛みで排便障害となったものや、排便反射の改善には鍼灸が有効となる場合があります。

     

    便秘の鍼灸治療

    鍼灸: 大腸兪、便通(大腸兪外方3寸)、左腹結(上前腸骨棘前内縁中央から内方1寸)、天枢、小腸兪

    灸よりも鍼の方が奏功することが多い

     

    療養指示

    排便を毎日つける習慣にすることが重要です。歩行または適当な運動によって腹筋の力を増す方法を考え実行します。食物は線維に富む植物性食品を多くし、コンニャク、イモ類を増やし、食事の量も増加しなければなりません。生野菜、果実は便通を促します。飲み物などの水分摂取を心がけます。酢を含んだ調理も腸の蠕動を亢進します。ただし、肉類は適さず、果実でもリンゴは便秘に傾くので注意してください。